自然豊かなビーチに恵まれた徳島県阿南市では、2018年からSUP(Stand Up Paddleboard)体験を通じて、地域や地域の人々と多様に関わる人を指す「関係人口」を増やし、まちを元気にする「阿南SUPタウンプロジェクト」に取り組んでいる。SUPは、ボードの上に立って一本のパドルで海や川辺などを進むスポーツ。「SUPクルーズ」「SUPサーフィン」「SUPヨガ」など様々な種目で、老若男女問わず気軽に楽しむことができる。SUPで使用するボードはサーフボードと比べてサイズが大きく、パドラーからは「ビーチの近くにマイボードを保管したい」という意見が多い。そこで市内のビーチに艇庫を設置することで、ビジターパドラーが「ホームビーチ」として定期的に阿南市を訪れる機会を創出した。
総務省の関係人口創出拡大事業の採択を受けた昨年は、SUP体験会を開催したほか、台湾など海外インフルエンサーに協力を促し、実施したモニターツアーでは参加者からは軒並み好評をいただいた。このように当プロジェクトの初年度においては関係人口の裾野拡大が図られ、海辺の賑わいづくりにもかなりの成果が見られた。本年度は「関係人口の深化」に重きを置いた政策に取り組んだ。事業のコンセプトは、SUPを通じて生まれた交流を「環境に配慮した持続可能なまちづくりへの協働」へ深化させ、関係人口の創業を支援して地域経済を活性化させようとするものである。
この事業の主役となるのが7月から阿南市で募集を開始した、県外在住の個人会員「ESCA(Earth Ship Crew Anan)」と市内の事業所「ESPA(Earth Ship Partner Anan)」の両者である。
ESCA・・・「海岸・河川の美化活動」「プロジェクトの運営サポート」「環境に配慮したライフスタイルの実践」「SNSなどでの情報発信」のうち2つ以上に参画した方。市内のSUPイベントに地元のSUP愛好者等と共に参加することで、徐々に関係を深め、継続的に阿南を訪れる熱狂的ファンになってもらう。
ESPA・・・「海岸・河川の美化活動」「プラスチックごみ削減及び、ごみの海洋流出や不法投棄防止に関する啓発・実践活動」「環境に配慮した製品、商品、サービスの開発・販売」「ESCA会員への特典サービスの提供」「SUPタウンプロジェクトに関する活動サポート」のうち2つ以上に参画した事業所。この環境保全活動等を実践して企業ブランディングを高め、ふるさと納税の返礼品等を通じて「サステナブルなまち」阿南市を全国にPRする一翼を担ってもらう。
これによって「外から地域にお金が落ちる仕組み」を創出するとともに、「地域でお金が回る仕組み」を同時に構築していく。将来的には補助金や交付金等の財政支援に頼ることなく、民間主導で持続していく事業を目指している。コロナ禍で働き方やライフスタイルが大きく見直される中、自然と触れ合うSUPフィールドとして、マリンスポーツの仲間づくりの場として、あるいは新たなビジネスの拠点や移住先として、阿南市の可能性はますます膨らんでいる。新たなS(スタート)UP(アップ)が始まる今年、これからの阿南市の取り組みに注目してほしい。