山下舞さん
出身地:大阪府
移住年:2023年
職業:団体職員
年代: 40代
取材年月日 2025年2月
つるぎ町貞光に祖母の家があり、小学生の頃の里帰りによく遊びに来ていたという山下さん。
「ここに住めたらどんな風だろう」という漠然とした思いをカタチにしたのは、38歳のとき。
現在は忌部文化研究所が運営する宿泊施設でスタッフとして働き、地域の一員としての活動を広げる中で「つるぎ町RPG ツルギスタ 巨樹と時つむぎのソラ」の制作WSにも参加。ゲームのストーリーは山下さんのグループが考えたものが採用されました!
---つるぎ町へ移住しようと思ったのは、おばあさんのお家があったからですか?
山下さん そうですね。貞光に母方の祖母が住んでいたので、小学生の夏休みとかよく遊びに来ていました。子どもの頃は『となりのトトロ』に出てくる「まっくろくろすけ」が住んでいそうな家だな・・・と、ちょっと怖いイメージがありました。でもある日、その家の2階の窓から見た風景がなんだか凄く好きになって。それをきっかけに「いつかあの家で暮らしてみたい」という思いが芽生えたような気がします。
---その思いが「移住」決断に繋がったきっかけを教えて下さい。
山下さん 私、ずっと実家暮らしで、「一人暮らしをしたことがない」ってことにちょっとコンプレックスがあって。大阪で介護の仕事をしていたんですが、体を壊して正社員を辞め、パートになって関わり続けて。そのせいか、同居している親にもしものことがあったら「(利用施設にとって)良いご家族さん」になるぞ!という斜め上な将来設計をしていました。そうなった時に正社員だと動き辛いな、パートより在宅ワークができたらいいな・・・なんて数十年思っていたら本当に在宅でできる仕事を見つけて。
---それはよかったですね。
山下さん その時、38歳で。「何かするなら今じゃない?親もまだ元気だし、よし!一回一人暮らし、してみるか!」、「あ、在宅ワークなら大阪じゃなくてもいいやん」、「一人暮らしをするならあの家(貞光の家)じゃないの!?」と、2023年の8月から動き出して、2024年の1月にはこっちへ移ってきました。
---すごい急展開!しかも1月って、寒い時期に移住されたんですね。
山下さん その時はワクワク、ドキドキの方が勝っていたせいか、寒さはあまり感じなかったです。それに、はじめの数ヵ月は祖母にも大阪から一緒に来てもらって、こちらでの暮らし方を教えてもらいました。ガスもガスボンベだし、暖房もストーブで、灯油が必要だったり。わからないことだらけで、ご近所への挨拶も一緒に行ってくれて、祖母がいてくれたおかげでとても助かりました。
---念願の一人暮らしはどうですか?
山下さん 自分のズボラさを実感してます(笑)。移住した時はあまり気にならなかった寒さも、冬はやっぱり寒くて。特にお風呂場!寒すぎてお風呂を沸かすのも面倒で、剣山木綿麻温泉や岩戸温泉に行ったりしています。
---温泉、いいですね!
山下さん 地域の施設を知るという意味でも活用しています。寒さを我慢してでも「家でお風呂に入らなきゃ」ではなく、「そういう暮らし方をしてもいいんだ」「そういうやり方もあるんだ」という方法を自分で見つけて、体験しながら楽しんでいます。
---お仕事は?在宅ワークはいかがですか?
山下さん スキル不足を感じて、その仕事はわりと早い段階で辞めました。
---え!? じゃあ、こっちで仕事探しを?
山下さん 「仕事を探した」というより、「繋がった」という感じです。
---繋がった???
山下さん こちらへ来たとき、SNSでつるぎ町に関する投稿を見つけてはイベントや草刈りなど、ちょっとしたお手伝いに参加させてもらっていて。その中で「家賀再生プロジェクト」の栃谷京子さんと出会い、マルシェなどのお手伝いしたりするうちに、『家賀の郷清笹』の運営スタッフを募集しているから、と。その流れで今はその仕事をしています。
---地元の活動に興味を持って動いていたら、自然と仕事が見つかったんですね。
山下さん そうですね。地域の活動といえば、「つるぎ町RPGツルギスタ」のゲームを作るWSにも参加しました。
---おお!ゲーム、好きだったんですか?
山下さん いえ。詳しいわけではないんですが、つるぎ町役場の三木さんをはじめ、いろいろな方に「参加してみない?」って声をかけていただいて。「何でもやってみよう!」という気持ちで参加しました。
---「ツルギスタ」は町の一大プロジェクトですね。開発は2年かかりで、ゲームに登場するモンスターや呪文も公募し、たくさん応募があったと聞きました。
山下さん 私もモンスター、応募したんですが、採用されませんでした(笑)。
WSはゲームのストーリーを考えるというもので、10代~40代まで幅広い年齢の方が参加されていて、5つくらいのグループに分かれてストーリーを考えるのですが、私たちのチームが考えた高校生を主人公としたストーリーが採用されました。
---すごい!WSはどんな感じだったんでしょうか?
山下さん ストーリー自体の細かい設定や肉付けはゲーム会社の方がして下さったのですが、その手前のアイデア出しの部分をWSで行いました。これまでWSに参加したこともなかったですし、ゲームのストーリーを考えるという経験も初めて。自分の意見を言う時も、「これを言ったら、どう返されるんだろう?」と初めはドキドキしていたんですが、「すごい」「なるほど」「大丈夫」って、チームの皆さんがどんなアイデアもすごく優しく包み込んでくれて、とても楽しかったです。
---つるぎ町の小ネタも満載で、まちのことを知っていると一層、ゲームを楽しめます。
山下さん ゲームに詳しい人は、どこかのポイントへ行ってアイテムを取るとか、「そういうのを入れた方がいいよ」って意見を出してくださった人もいて、他のゲームも調べて「こんなのがありましたよ」って、出してくれる人がいたり。みなさん、それぞれ仕事もあるし、子育て中の方もいて、忙しいと思うんですが、WS以外でもLINEでやりとりしたりして、前向きに情報交換しながら作っていった感じです。
---そうした体験も踏まえ、山下さんが考える移住成功のポイントは何でしょうか?
山下さん 「動くこと」かなと思います。今の目標はつるぎ町の一町民になるぞってことで。住んでるだけでも町民ではあると思うんですけど、お祭りがあったら参加するとか、催し物があったら行ってみて、何かお手伝いが必要なら参加するとか。町に積極的に関わっていきたいと思っています。
廃校となった一宇中学校を保存活用したいという思いから地域や廃校の知名度向上を目的に開催されたイベント「イチフェス」の様子。
2024年はマルシェやライブ、校舎のライトアップなどが行われた。
---繋がりを大切にしていきたいと。
山下さん そうですね。家と仕事場の往復だけっていうのは、大阪と変わらんよな、と。大阪にいた頃は「何かしたい」っていうことでもなく、今の生活で満足というか、そのままの生活でも楽しく生きていけてるって、若干思い込もうとしたしていたところがあったと思います。「これで収めとけ」みたいな。こっち住んで私の人生は仕事と家だけではなく、町や人との繋がりの中にも作れるんだと思って。実際、動く中ですごくいい人たちと繋がれていると感じています。
---貴重なお話、ありがとうございました!