昔ながらの雰囲気を残す”うだつが上がる“まち
「こういう昔ながらの町並み、大好きなんです」。トリンドルさんが足取り軽く歩くのは、県西部の美馬市・脇町にある「うだつの町並み」。隣家との境に壁面から突出してつくられた「うだつ」と呼ばれる防火壁を備えた白壁の豪商屋敷が建ち並ぶ、江戸や明治時代にタイムスリップしたようなまちだ。その一角で突然足を止めたトリンドルさん、なんだか素敵な古民家を発見したみたい。のぞいてみると、おしゃれなインテリア雑貨や本が!
「ここ〈うだつ上がる〉は書店やセレクトショップなどが入った小さな複合施設なんです」と、オーナーで建築家の高橋利明さんが人なつっこい笑顔で迎えてくれた。うだつ上がる内の間借りカフェ〈日日間(ひびあわい)〉で、すだちを絞って食べるマスカットケーキと阿波晩茶のアイスティーを注文してひと休み。「すだちの酸味がいいアクセント」とトリンドルさんの顔もほころぶ。
地元の人から観光客までが集い、人と文化の交差点となっている、うだつ上がる。「このあたりは昔、藍の商いで栄えていました。商人のまちとしてにぎわっていた”ここらしい風景“をこの先もつなぎたくて」という高橋さん。所属する〈風土創研〉では、近くの古民家を数軒取得して改装し、オーベルジュなども開業予定だとか。「昔からあるものを守りながら、いまの時代に響くかたちにしているなんて素敵!」とトリンドルさん。こんなまちに住めたら、楽しそう!
高橋利明さん:大阪出身。2 0 0 1年に就職を機に徳島へ移住。建築家兼〈みんなの複合文化市庭うだつ上がる〉オーナー。〈風土創研〉のメンバーとして、その土地らしい景観を次世代につなぐ活動も。
移住者インタビュー
美馬市× 高橋利明さん
大阪から移ってきて惚れ込んだ そんな土地をより楽しくしたい
「大阪からこちらに来たのは20歳のころ。働きたい建築設計事務所が徳島市にあったんです」。そう語る高橋利明さんは、30歳で事務所から独立してからも、「その土地の原風景を活かした建物を設計していきたい。まずは、徳島らしい建築を」という目標を実現すべく、この地で暮らすことを決めた。「吉野川に惹かれたことも理由のひとつ。この川は、徳島の文化や歴史、生活にとって重要な存在。2 0 0 0年に国の公共事業に関する住民投票でその景観を守った『吉野川第十堰』から見る風景が何より好きなんです」。独立後に徳島市から阿波市に引っ越したことで、さらに徳島の環境のよさに気づいたという。「近所には畑で野菜を育てている人がいたり、養豚場があったりと、ただ暮らしているだけでも身近に食育に触れられる土地柄であることに感動しました」
活動は建築にとどまらず、徳島市内でセレクトショップの運営を経て、2 0 2 0年、美馬市脇町の築1 5 0年の古民家を改装し〈うだつ上がる〉を開業した。「歴史的な建物をただ保存するだけでなく、うまく利活用することで未来に残していけるようになる」と、その土地が持つ原風景を活かしたまちづくりにも活動を広げている。
「自分の住む場所が『おもろい』場所やったらええなと思って」と笑う高橋さん。そんな高橋さんのもとには最近、移住や将来についての相談が相次いでいるという。「移住者だから何か始めなきゃ! と構えてしまう方も多いんですけど、堅苦しく考えず、『徳島っておもろそう、住んでみたい』という軽い気持ちでいいんです。その一方で、何かやりたいと考えてる人には思い切りトライできる環境をつくってあげたい。いま住んでいる土地が好きだからこそ、自分たちでより楽しいまちをつくっていきたいんです」
※移住ハンドブック「旅する、暮らす、徳島県。」 より一部記事を転載しています。
「旅する、暮らす、徳島県。」 発行:徳島県/制作:講談社『FRaU 』編集部
Contents
WEB公開!移住ハンドブック「旅する、暮らす、徳島県。」~ダイジェスト版~
<トリンドル玲奈さんと、徳島を旅する>
【上勝町】山あいの”ごみゼロ“のまちに 古民家ジェラート店を発見!