音楽アカデミーと音楽事務所を主要な事業として取り組む「株式会社BYCエンターテイメント」の代表取締役・新城美知子さん。2023年1月に移住してこられました。
愛称「おかん」。地元大阪での経験を活かし、徳島を「夢の叶えられる場所」にするため奮闘中です。
ー新城さんが徳島市に移住されたきっかけを教えてください。
一年半前の2023年1月、こちらに「株式会社BYCエンターテイメント」という音楽関連の事務所を設ける事をきっかけに移住しました。
楽器演奏が趣味ではあるんですが、移住前は全く関係ない職種です。
約18年電気メーカーの秘書をした後、学校法人事務局長をしておりました。
ーかなり意外な経歴です。学校はどんな学校だったんですか?
専修学校と言いまして、中学卒業した後の子供たちが高校卒業資格を取るための学校で、通信の学校のカリキュラムをこなしながら、自由な時間割を選択できるという学校でした。
面白かったのが、「学校に行きたくない」っていう検索をしてこの学校にたどり着いた子がいたんですが、その子は学校が途中で楽しくなってちゃんと来るようになって卒業、ついに競輪選手になるという自分の夢まで果たしたんですよ。三年間でこんなに変わるって、すごいですよね。
学校が決めた事をするのではなく、自分で決めて行動させるというのを大事にする、そんな学校でした。理事長自身がバンドマンだったというのもあり、好きなことやりたいことをちゃんと形にできる子たちを育てたいというのが指導の中心になっていて、そこに共感しました。
目標を見つけ、夢を叶える後押しをしてきた専修学校時代
ーこんなにやりがいのあるお仕事をいったん区切って移住されたのは、大きな決断だったのではないでしょうか。
はい。事務局長として学校改革を推し進め、学びに自由度をもたせた専修学校にはなりましたが、それでもなお自由度が足りない。学校だけでは足りないんだと気づきました。
そこでいったん退職して、一年ぐらい考えようと思っていた時に、弊社取締役でもあるアーティスト・Hight(山岡隼人)と出会ったのが移住のきっかけになります。
ーHightさんは、関西のメジャーシーンでの活動を経てにUターンし活動している徳島県出身アーティストですね。
そうです。Hightとは、タレントで、絵本「えんとつ町のプぺル」の執筆もされた作家・西野亮廣さんの展示会の仕事で出会いました。
ある時、Hightが徳島でMV撮るから現場見に来てよと声を掛けられ、それをきっかけに、音楽のことなどをじっくり話すようになったんですが、その中で印象的だったのが、「徳島には地域の体験格差というものがある」と嘆いていたことでした。
関西では経済性の格差はあれど音楽やエンタメをやれるところはたくさんあるし、塾・教室などの助成もあるんですが、徳島にはそもそもやれるところが少なかったり、駆け込み寺があまりないという、体験格差です。
徳島にそんな場がもっとあったら、夢にチャレンジする子が増えるんじゃないかと話していて。「それ面白いかも」「やってみようよ」っていうので始まりました。
ーHightさんがもしも徳島出身の人じゃなかったら、新城さんも徳島にはいなかったということですよね。人の縁って不思議ですね。
体験格差を解消し、徳島でも夢にチャレンジ出来るように
ーBYCエンターテイメントを立ち上げた2023年6月以降、様々なイベントをHightさんと共に手掛けてこられた新城さん。手ごたえはいかがでしょうか。
この3月に、イベント「be SMASH」を開催しました。歌手のシェネルさん、TEEさん、SEAMOさんらに出演していただいたんですが、何とこれが初めてのライブ体験っていうお声をたくさんいただいたんですよ。『徳島でライブを楽しむきっかけをもらえた』っていうお声とかがすごくあって。ちょっと嬉しい時間でしたね。
本物のアーティストと徳島出身のアーティストが徳島で共演してほしいっていうのがあるので、今後もそういった場を創出して関わっていく中で、徳島でのこの体験格差を減らしていきたいです。
ー徳島市での暮らしで大変だったこと、不安だったことはありますか?
多少不安でしたけど、海外に住むことに比べりゃ簡単やん、日本人やんって思ってしまいました(笑)
徳島市はめちゃくちゃコンパクトに出来上がってて、めちゃくちゃ使いやすい街やなと思ってます。県庁にしても市役所にしてもショッピングセンターにしても、半径何キロっていうぐらいのところに集まっているので、すごく住みやすい場所だなと思いますし、住むことに対しての苦労っていうのはあまり感じてないです。
ただまあ、徳島の方って本当は喋ったらフランクなのに、一歩こう前に出るのを恥ずかしがっている方が多いなっていうイメージです。実は喋りたいと思っとったんよって言われたりするんですね。ちょっと早く言うてよっていう(笑)完全に生粋の関西人大阪人なので言葉が強く感じられることもあるんやろうなと思いながらも、こっちはガツガツ行くんですけどね。
そこだけかな?全然来てよっていう感じです!
ー今後の目標を聞かせてください。
目標だらけですが、一番近い目標は、せっかく東新町に拠点を持たせていただいたので、この商店街丸ごとで何かできたらなというところが一つ目で、二つ目は、若手が徳島で音楽をしたいって思った時に弊社がちゃんと駆け込み寺のような場所になりたいということです。
三つ目は大きすぎるんで笑っちゃうかもしれないんですが、5万人規模のイベントをいつか鳴門大塚スポーツパークポカリスエットスタジアムでやる!すぐには無理かもしれないですが。
東新町「もったいない。」を変えていきたい
ーBYCエンターテイメントの事務所は、第3回移住者交流会を開催したシェアキッチン「ミンナノバミツシカ」内です。現在、管理者の伊澤昌高さん(先輩移住者の声005)から託されて事務所を構えているということですが、日々目にする東町商店街の様子はどんな風に映りますか?
「もったいない。」関西だと堀江から難波、心斎橋から堀江、っていう感じで歩いて回れる場所っていうのがたくさんあって、周遊するっていう感覚があるんですけど、徳島の場合は車なのでどうしてもその目的の場所に行って、目的の場所から帰るってことになっちゃうので、その辺がもったいないなと思います。
一旦車を置いて、歩いて回れる場所にしたいなっていうのがありますね。
ー最後に、移住される方に一言お願いします。
徳島の方は本当優しい方ばっかりで、話は聞いてくれるし大変住みやすい場所だと思ってます。
すごく便利に出来上がっている町だと思うので、仕事も生活もしやすい。田舎っていうとダメなイメージを持たれたりするかもしれないと思うんですけど、そうじゃなくて自分たちでゼロから作れる場所だなと思うんで、ぜひぜひ移住してほしいと思ってます。
私も大阪の子たちに声かけかけまくってます。うちで仕事せえへん?つって(笑)
ーーー編集後記ーーー
徳島でエンタメを創出していくっていうのは大変で思い切った道のりだと思いますが、新城さんは移住者ならではの視点で徳島のいい面悪い面を知り、人をつないで文化をつくっていってくれる、まさに「おかん」の様な頼りになる存在だと思います。夢を叶える第一歩が、この徳島からでも踏み出しやすくなっていくのではないでしょうか。今後も期待しています!