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徳島県移住アドバイザー小林陽子の「移住なんでも相談室」①

2024.04.08

Iターン移住の極意
地方移住は「日本語の通じる外国へ行く」と思え!?

これから移住を考える人に向け、徳島県の最新移住情報について、40年以上移住に携わり、移住者のサポートを続けている徳島県移住アドバイザーの小林陽子さんにお話を伺いました。近年、リモートワークの急速な普及により、これまで地方移住の障壁となっていた「仕事」と「住居」の問題が緩和されてきました。以前に比べIターンの移住者が増え、生活に便利な地方都市への移住を希望する傾向にあります。移住地選びや移住の際に気を付けるポイントについて教えていただきました。

 

―――最近の移住の傾向として、UターンよりもIターンが多くなっているようですね。

そうそう。移住相談を受けてて、地方から東京へ行った子が「移住しよう」っていうより、もともと都会育ちっていう子の相談がめちゃくちゃ増えてる。だから「田舎のこと、知ってる?」とか「知らんの?」とかいうレベルじゃなくて、地方移住は“日本語の通じる外国”へ行くつもりで考えてもらわんとアカンと感じています。

―――外国ですか!?

いや、ホンマよ。以前は「田舎の紹介してあげたらエエんちゃうかな?」と思ったりしてたけど、そのレベルじゃないね。例えば徳島県南部の海側は東南アジアのビーチ系、徳島県西部の山側はヒマラヤ、チベット…と言ってあげる方がいいな、と。「日本語の通じる外国やと思って来てください」ってくらいがちょうどいいような気がしてます。

 

↑東京、大阪、名古屋など大都市圏で行われている移住マッチングフェアで相談対応を行う小林さん。

―――東京生まれ、東京育ちという人にとって、田舎のイメージは漠然としているのかもしれないですね。

対面での移住相談で目の前に座られた方にはまず、徳島の地図を拡げて「どのくらいの田舎までがOKですか?」ってお尋ねするようにしています。県南部でいえば、大型スーパー、大型量販店、ファストフードチェーン店があるのは阿南市まで。それより先は阿南市まで車でどのくらいかをお話してますね。「美波町なら車で30分。阿南市でお仕事されて、美波町でお住まいになっている方も多いです。通勤圏内です」って。そういう具体例を挙げて説明しないと、ピンとこないみたい。

―――小林さんは移住の極意として「一年間は静かに暮らす」ことを推奨されていましたが、比較的街の方でもそうでしょうか?

「静かに暮らす」というか、やっぱり「地域に馴染む」時間がいると思うんですよ。最近、特に気をつけないといけないと思うのが方言。移住に失敗するケースで「移住者とコミュニケーションがとれない」、「移住者がトラブルを起こす」って、アレ。言葉が通じてないと思うんですよ。徳島(阿波弁)も関西弁みたいに聞こえるけど、全然違うからね。

↑徳島県の方言(阿波弁)が書かれたクリアファイル(徳島県移住コンシェルジュ私物)。「いける」はかなり頻繁に使用します。

―――なるほど。

それから方言の問題ともちょっと違うんやけど、移住してきた人と一緒に空き家改修をしてて、「ネコ持ってきて!」って言ったらポカンとするんよ。「猫ですか?」って。「一輪車よ!」っていうと、曲芸で使う一輪車と思うみたいで、話が噛み合わんの。他にも「テミとって」って言っても、“テミ”が分からない。

※ネコは猫車、テミは手箕(落ち葉などのごみ集めの際に使用する農具)

―――都会で住んでいたら使うことのない道具ですからね。

私らが何気なく使っている言葉でも、移住者には全然通じていないことってあるんちゃうかな。「それ、何ですか?」って聞いてくれたらいいけど、なんとなく聞き流して分からんままにしていると、気がついたら溝が広がっているってことがあると思います。

―――その誤解が「田舎で阻害された」とか、「仲間外れにされる」と言われる原因かも知れませんね。

私はいつも言うんです。「無理することないよ」って。地域の人に会ったらニコニコして、ご挨拶をちゃんとして「まだ慣れてないんで」とか、「慣れてないからもうちょっと待ってください」とキチッと言うようにしてって。移住してきたばかりの田舎初心者は、運転免許とりたての人が初心者マークをつけているみたいに、町に慣れてないことを周りの人に知ってもらう方が暮らしやすいと思います。

この間も移住してきたばかりの人が「消防団に誘われて、ちょっと迷ってる」っていうから、「まだ来て1年目。迷ってるんだったらやめなさい」ってアドバイスしました。「町外に勤めに行ってるので、今はちょっと入れないです」と断って、ある程度慣れてきて「入ろうかな」と思った時に入ったら?って。

↑美波町の消防団の出初式の様子

―――それぞれの事情で町内のイベントごとに参加できないこともあっても、引け目を感じることはないってことですね。

全然ない。コロナで町内会や寄り合いが減ったんですよね。口には出さんけど、住んでる人も楽になったっていう感覚がありますよ。今までやめれんかったことが「コロナだからやめよう」という雰囲気も手伝って、時代に合ったカタチに変ろうとしている。そのおかげで他所から来られる人も少し楽になったと思います。

―――一方でお祭りが中止になったりして、地域のコミュニティに入るきっかけをなくしたという人もいるのでは?

地域に慣れる期間があったと思えば、ちょうどいいんちゃう? お祭りが復活したときは来たすぐより、入りやすいと思いますよ。ただ地域に溶け込むのが上手な人は祭りとか大きな行事より、溝掃除やら分別収集やら、そういう普段の小さな共同作業をスイスイッとこなしてますね。気が利くというか、そういうところに気負いなく参加できるタイプの人は地域に馴染みやすい。それがやりにくい人は伝えといた方がいいね。「ちょっと苦手なんです」って。それも人それぞれやからね。

↑毎年秋に開催される大規模マッチングフェア「ふるさと回帰フェア」の様子。全国の自治体や移住支援団体など約350団体が出展し、来場者数は2万人を超えることも。移住希望者は各地域の担当者と直に話をして情報収集し、移住地を探します。

―――方言のことも含め、地方暮らしの経験がある人はIターンよりUターンの方がおすすめですか?

うーん・・・。自分の地元が好きでない子っておるんですよ、やっぱり。ちっちゃい時にイヤな思い出があるとか、学校も嫌だったとかいう人はムリに帰らなくてもいいと思います。Uターンしたいけど親や親戚のしがらみがあってストレスになるようなら車で1時間の近隣の町に住むとか、全然違う地域だけど原風景と似た場所を探すとか、実際に行ってみて自分が「いいな」と思う場所へ移住するんが一番いいと思います。