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AWAIRO特別インタビュー NPO法人エコロジカル・ファーストエイド 理事長・研究員 佐藤貴志さん

2022.10.18

AWAIRO特別インタビュー 

NPO法人エコロジカル・ファーストエイド
理事長・研究員 佐藤貴志さん

世界の著名人による講演を企画、配信しているTED(Technology Entertainment Design)。ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズなども出演した話題のプレゼンテーション番組です。佐藤さんは2016年、TED×shimizu に環境分野で活躍するサイエンティストとして登壇したことをきっかけに、アジアを中心に国内外からのオファーを次々と受け、自分にしか出来ないことを見つけました。
そうしてサラリーマンを辞め、「持続可能なまちづくり」に取り組むNPO法人エコロジカル・ファーストエイドを立ち上げました。
とくしま若者回帰アンバサダーから「取材に行きたい」とリクエストが多かった佐藤さん。取材はちょうど新型コロナウイルスの感染が拡大した時期と重なり、チャンスを逃した人も・・・。
取材の際、若い世代に向けた熱いメッセージをたくさんいただきましたので、特別インタビューとして掲載します。

佐藤さんの活動についてはまずはコチラをチェック!
とくしま次世代モノづくり推進協議会『KUSABIBITO』
https://kusabibito.jp/creator_04.html

■なぜ「エコロジカル・ファーストエイド」なのか? 
NPO法人エコロジカル・ファーストエイドはネパール、インドなどアジアを中心に国内外で住民一人ひとりが主人公となり、地域に潜む課題解決の取り組みを通じて、持続できるあたたかいまちづくりをしています。プロジェクトは、「経済的自立支援」と「環境面の自立支援」の2本柱で展開。地域課題の解決に経済活動を重視するその理由は・・・

佐藤さん:国際NGOから来るオファーの内容はどの地域も、「飲み水の水源が汚染されたので水質浄化装置YOUの技術を提供してほしい」というものです。でも、僕は言われたままに提供することはありません。実際に現地に入り、地域住民と家族のような信頼関係を構築します。すると、とんでもない事実を耳にします。住民は口を揃えて、「この池(井戸)は、浄化されなくてもいい。それより、明日ごはんが食べられないかもしれない」と。
こんな状況で、住民を主人公にして環境問題に取り組んでも、プロジェクトは持続ません。

さらに、こうした貧困問題はご飯を食べられないということだけではなく、人身売買や性犯罪、子供たちの命に関わるような危険や不幸に直結しています。
インドのハリヤナ州に行ったとき、村中の人たちが笑顔でワーッと集まってくるのですが、その中に女の子がいないんです。信頼関係を築いた後、「なんで女の子がいないんですか?」と尋ねると、「人身売買で売られていったんです」って。そんな悲しい子供たちを一人でも減らすために、経済的に自立できることを重要視しています。僕たちがそこにいなくなっても、自分たちの力で生きていけるよう、環境保全活動をすると利益が生まれるという、社会システムの構築を行います。

―――環境保全活動をすると、利益が生まれるとは、どんな仕組みでしょうか?

佐藤さん:環境問題は地域住民の生活習慣から起こるものです。住民が悪いというわけではないんですが、これまでの習慣をちょっとだけ見直し、環境に対しファーストエイド(応急手当て)することで、環境は改善することができます。
またさらに、自分たちが生きていくための収入源を作ることもできます。
ネパールのYOUプロジェクトを例にお話しすると、ネパールではエコツーリズムを作りました。
エコツーリズムは、環境がテーマの修学旅行のようなもの。地域住民一人ひとりが、自分たちの生活習慣の中に環境を守る創意工夫をします。おじいちゃんから子どもたちまで環境を守るとお小遣いが入ってくるというものです。

エコスーリズムの参加者は、村に対して1人10ドルの参加費を支払うんですが、そうして得た利益は子どもからホームレスの方まで誰ひとり取り残さず、分配します。先進国から参加者が10人来たら収入は100ドル。ネパールでは日本円の20円が1000円くらいの価値ですから、100ドルも入れば村はもう、お祭り騒ぎ。歌え、踊れのフェスティバルです。
そしてこれが「環境保全の競争」を引き起こします。隣の村人が、「最近、あっちの村、羽振りがイイよね。何してるの?」。「YOUプロジェクトです」。「うちの村でもやりたい!」となります。

またさらに、ホストとなる「村人の環境を守る創意工夫」がおもしろいものであるほど、ツーリストが多く集まります。現地では、ツーリスト獲得のために、「生活のために環境保全」を考えるようになります。これって、「経済的自立支援」と「環境面の自立支援」になってますよね?
このように、「日常の仕事などの生活習慣の中に、無理のない範囲で、ほんの少しの“自然界へのファーストエイド(応急手当て)”をすること」が大切です。
これが団体名の由来です。

■一人一人が主人公になって課題解決へ向う「YOU PROJECT 2.0 」
自然環境を回復し、経済的支援に繋げるプロジェクトは、「一人一人が主人公になり、あなたに寄り添っていくプロジェクト」という思いを込めて、「YOU PROJECT」と命名。佐藤さんは研究者としての環境を回復させる技術、今までになかった新しい地域経済の創出、少子高齢化に歯止めをかけるあたたかいまちづくりのための活動を無償で行っていて、プロジェクトはアジアを中心に国内外(国内では西日本を中心)に展開しています。

佐藤さん:水質浄化装置YOUは、徳島県内だと小松島市と阿南市、板野郡にそれぞれ1つずつ設置してあります。住民の手で作られた装置が10機くらい稼働していて、中には高校生が作った装置もあります。
構造はできるだけシンプルな設計にしていますが、作るためにはちょっとした訓練が必要です。日本国内であれば、学校教育も充実しているので、最高レベルで技術提供しても理解してもらえますが、発展途上にある国だと複雑で難しいと思われることもあるので、技術レベルを落として、簡易化することもあります。
材料はホームセンターで揃うもの。“どこでも手に入る”という意味で、そういう例えをしていますが、実際はすべて地元の商店で購入しています。少しでも地域経済の活性化に加え、地域との関係性構築、あたたかいまちづくりに役立てばと願って、そうしています。
材料費は装置の大きさによっても変わるのですが、高校生が製作した家庭用100Vで稼働するサイズだと12万円~20万円くらい。同レベルの動力のよく似た装置を買おうとすると500~600万円ぐらい、設置費用まで入れると900万円かかるので、10万円ちょっとで高校生でも作れるって、よくないですか?装置YOUが先進的な特許技術であるので、コストも抑えた装置の製作が可能です。

■人材育成を目的としたもうひとつの活動
NPO法人エコロジカル・ファーストエイドと聞くと、「川を蘇られせる活動」、「水質浄化の取り組み」を行う団体と思っている人が多いですが、それは活動の一部分に過ぎません。本質は持続できるあたたかいまちづくりをする団体です。佐藤さんが特に力を入れていることは、子供たちが主体のプロジェクト支援やグローバル人材の育成、入試のサポートなど若者の夢を応援する地域づくりです。

佐藤さん:私たちが目指すまちづくりの最終到達点は、若者にとって過ごしやすい街。これを達成されることで少子高齢化に歯止めをかけ、未来を生きる子どもたちに美しい自然を残す。この2つを同時にやらなくてはいけないと考えていています。

―――若者にとって過ごしやすい街とは、どんな街でしょうか?

佐藤さん:“若者の夢を応援してくれる街”だと考えています。アメリカのポートランドがそういう街。今、ポートランドでは少子高齢化とは真逆の現象が起こっていて、若者が参入し過ぎて社会問題になっています。魅力あるから若者が勝手に集まってきてくれる。そんな風なまちづくりをすることが僕の目標です。

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―――まちづくりの担い手である人材を育成する際、どういうところにポイントを置いて指導されていますか?

佐藤さん:まずは学校で学んだ知識を上手に使う能力を身につけること。「社会に出たら、学校で学んだことは使わない」って話をよく耳にしますが、どう使えばいいか、使い方を知らないだけで、実はよく使うんですよ。それを知っているだけで生活がすごく楽しくなる。
そんな風に知識を上手に使っていく力を身につけることや、コミュニティを上手に作る力も身につけてもらいます。「組織に1人いるだけで組織全体を良くしていけるような、人間関係の環境整備ができる子」の育成にも力をいれています。

―――なんだかハイスペックですね。

佐藤さん:特別なことではないですよ。例えばすごくあたたかい人と話をする機会があるとするじゃないですか。家に帰って、お風呂に浸かった時にまた思い出して「今日はいい日だったな・・・」って、幸せの感覚がいつまでも残ることってありますよね?もし、こんなあたたかい人が1人/100人だったら?1人/10人になったら?
僕が考える“あたたかいまちづくり”にはそういう人がすごく重要なんです。そんな風に周りの人を幸せにできる人を1人でも増やしていきたいと思っています」。

■佐藤式 大人にも子どもにも役立つ!自分の力の鍛え方
佐藤さん自身がこれまで体験して、コミュニケーション能力の向上や子供たちの成長に繋がったことをいくつか紹介いただきました。

①全力で1人1人の可能性を信じて応援する
本人以上にその人の可能性を信じて応援する。チーム全体に全力の愛情を注ぐ人になる。人から受けた愛情が深いほど、包容力となって人に愛情を注ぐことができる。子どもには全力の愛情を。

②相手の意見に対しては「Yes. and・・・」
誰かの意見に対して「否定的な意見を言ってはならない」というルールを自分自身に課す。どんな意見に対しても「それ、いいね」と肯定して受止め、「but・でも」ではなく、「and・そして」で返事をする。とんでもない意見の方向性を修正するためには、話の可能性を拡げる方法を必死に考えないといけない。そういう訓練をしているうちに良い人間関係を構築する力を身に付けることができる。

※「No But」ついつい否定するクセがある人は・・・
「No But」が口癖の人が思考を変えるには、日記を書くのがおすすめ!反省日記を毎日3行以内で書くこと。「自分の思考プログラムを書き換える方法っていうのがあるんですよ。僕も1年間ぐらいそれをしたかな?」と佐藤さん。「こうすればいい」という建設的な思考で、文章を書き続けると自分の思考プログラムを書き換えることに繋がるそう。佐藤さんはボランティアで悩み相談やカウンセラーもしていて、「人様の悩みを聴くっていうのは半端な気持ちではダメ。座学1年半、実務2年半で、やっと正規の相談員に。その間、毎週毎週レポートを書き続けたんですけど、この体験が自分のまずかった思考の修正にもなって、いい経験でした。“書く”っていうのはすごく大事です」。

③長所を見つけて、それを口に出す
自分では自分の長所に気付きにくい。人に言われて初めて気が付いて、一気に伸びる。「子どもも高齢者でも同じ。本人でも気付いてないような長所を見つけて、口に出してあげるっていうことは全年齢層に向けて続けています」。
④答えを教えてもらうのは「あり」
自分で考えるべきか、答えを教えてもらうべきか・・・という悩みに対して、答えを教えてもらうのも「あり」。テストなど評価に繋がらない部分(匠の技など)の、“経験などに基づいた答え”である場合、先に答えを聞いた方が道しるべにもなり、結果として成長を促す効果も。「何かの先生レベルの答えに到達するには、同じ年齢にならないと難しい場合もありますよね?同じ時間をかけなくても答えを教えてもらえば、その境地を垣間見ることができるかもしれない。僕の場合は答えだけでなく、考え方も伝えます。そこから自分流にグレードアップしたり、形を変えていったりしているので、答えを教えるのは、結構ありかなっていう気がしますね」。

★手っ取り早く成長したい人へのメッセージ
地域の課題解決など、とにかく社会経験を積むことのできるプロジェクトに参加すること。NPO法人エコロジカル・ファーストエイドが行う「エコファースト」のプロジェクトは、文科省が育成を目指す学生像をもとに各大学が作ったアドミッションポリシーを補完するように作られているため、様々な経験が可能に。大学受験、就職試験の面接など自身の体験がモノをいう場面において、実体験があるか、ないかでは言葉の重さが全然違う。「困ったら僕のところへ来てください(笑)」。

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NPO法人エコロジカル・ファーストエイド
http://eco-1st-aid.com/