移住者インタビュー

Interview

Iターン30代編集・クリエイター美馬市

移住してきたことで「ふるさと」が増えました。

長谷 梓さん

出身地:神奈川県

移住年:2015年

現住所:美馬市

職業:自営業

取材年月:2015年11月

元モデルにして似顔絵イラストレーター、数秘術を使うカウンセラーと興味深い経歴を持つ長谷梓さん。現在は徳島市に事務所を構えて「ももはる堂」として活躍している彼女に、美馬市へ移住してきたきっかけをはじめ、徳島で生活する思いなどを聞いてみました。

「ふとした思いつき」から周囲に移住を宣言。

--もともと移住はまったく頭になかったそうですね。

長谷さん:はい。私自身は神奈川県の出身で、ずっと東京や横浜で仕事をしていました。主人が美馬市の出身なんですが、結婚してからも「いつかは徳島へ」みたいな話もなく、まさか自分が四国で暮らしはじめるなんて思ってもみませんでしたね(笑)。移住のきっかけを強いて挙げるとすれば、それは長男が生まれたこと。当時は似顔絵専門のイラストレーターとして働いていたんですが、出産1週間後から締切に追われて仕事をしていたんです。半年後にやっと時間の余裕ができたので、徳島の主人の実家へ孫の顔を見せるために連れてきて。そのとき、ふと「こっちで暮らすのも悪くないんじゃないかな」と思ったことがすべてのスタートでした。

--出産と仕事が重なって心身が疲れていたときに美馬市を訪れたということですか。

長谷さん:ちょうど都会で子育てすることの難しさを感じていた頃で。マンション住まいだと夜泣きの苦情もありましたし、保育園に入れたくても空きがない。自分自身を省みてもそうなんですけれど、やっぱり都会育ちだと、どこか余裕のない感じがあって、もっと伸び伸び育ってほしいと考えていました。徳島で子育てをすれば、寛容な人柄の大人になってくれるのではという期待もありました。

--突然「移住する!」と宣言したときは、みんなびっくりしたのでは。

長谷さん:身内から友人まで驚かない人は一人もいませんでした(笑)。特に私の両親にしてみれば、せっかく生まれた孫が離れてしまうので、とても残念だったようです。思いつきで始まった移住でしたが、今から振り返ってみれば、仕事を含めた「自分の生き方」そのものを考え直す時期に来ていたような気がします。長く悩んでいたら、否定的な理由でがんじがらめになってしまっていたかもしれませんね。あまりにもノープランで移住したせいで、いまだにバタバタした毎日を送っていますが、それはそれで楽しいので特に問題はありません(笑)。

徳島で暮らすことで考え方が変わりました。

--最初から移住先は美馬市と決めていたのでしょうか。

長谷さん:実は最終的に落ち着いたのが美馬市だったんです。主人の実家を拠点にして2ヵ月ほど車で徳島のあちらこちらを回ったんですよ。当時は「移住=田舎に行く」ことだと思い込んでいたので、かなり山奥まで足を運んだりもしましたが「いきなり山奥で暮らすのはハードルが高い」と反省しました(笑)。雄大な自然に手も足も出ないというか、何かあったときに生きていくだけのスキルもないですし。いろいろ話し合って主人の実家がある美馬市に住むことに決めました。街と自然とのバランスが、私たちにはちょうどいいのかなと感じています。

--移住前に詳しくリサーチなどはされましたか。

長谷さん:インターネットで自治体のウェブサイトをいろいろ見たんですけれど、あまり情報がなくて…。一番役に立ったのはTwitterですね。東京の有楽町で行われた移住フェアなどもTwitterから知ったんです。四国4県のブースでいろいろ担当者の方にお話を聞くことができたのは随分と参考になりました。都会に住んでいると、徳島のことって本当にわからないんですよ。神山町や上勝町みたいな一部の地域だけが有名になっているような状況ですけれど、それが県内のどのあたりにあるのかは土地勘がなければわかりません。いくらインターネットで調べても、住まいや仕事に関する情報が出てこないのは困りましたね。

--実際に美馬市で暮らしはじめた感想はいかがでしょう。

長谷さん:とにかく毎日がめまぐるしく過ぎていきます。こちらに来てから数秘術占いのカウンセリングとイラストレーション、デザインを手掛ける「ももはる堂」を起業したんですが、新天地で暮らしと仕事をゼロから始めていくのは本当に刺激的な経験です。すごく頭を使いますし、都会で暮らしていたときと比べると、根本的に考え方が変わった気がします。そういう意味では、移住が着実にキャリアアップにつながっている実感がありますね。また「どこでも生きていける!」という自信がつきました。

人とのつながりが生活を楽しくするコツ。

--とてもアクティブに徳島での暮らしを楽しんでいるイメージがあります。

長谷さん:それはこちらで暮らしはじめてから変わった部分ですね。私は運動もできないし、もともと野外で遊ぶようなタイプではないんですよ。でも、せっかく自然が豊かな場所で暮らしはじめたんだから、いろいろやってみないともったいないじゃないですか(笑)。たとえば、新しく知り合ったリバーガイドの方とツーリングカヌーをして、それをFacebookにアップすると、東京の友人たちの間で大評判になったりするんです。ここ最近でFacebookのフォロワー数が一気に増えましたし、それだけ移住に興味がある人が出てきているのかなとも思います。

--地域の人たちとつながっていくことで生活が変わっていく。

長谷さん:そうですね。地域の人とつながることで目の前が一気に開けていった気がします。私が住んでいる美馬市でいえば、カフェ「ruche CAHOA」の吉田さんやセレクトショップ「フナトト」の田村さんみたいに、どんどん人をつなげていってくれるキーパーソンの存在が本当に重要だと思います。自然と人が集まる良い雰囲気の「場」が、どんどん人を惹きつけるのでしょうね。人とのつながりが都会よりも濃いといっても、こういう方々と出会えなければ、徳島で今のような充実した暮らしはできていないんじゃないかな。

--これからの暮らしはどのようなものになりそうですか。

長谷さん:大それた夢かもしれませんが「地方から都会へ」という流れを逆にしたいんです。都会の仕事を徳島で実現したり、もっと美馬市への移住者が増えるように、自分の体験を通じて紹介していきたいんですよ。私は移住してきたことで「ふるさと」が増えたと思っていて。徳島で暮らすようになって、毎日のように新しい体験ができるし、どんどん面白い友人も増えるし、デメリットが思い浮かばないくらい楽しいんです(笑)。地域の魅力って、突き詰めていくと「そこで暮らしている人が幸せそうかどうか」に尽きると思うんですね。だから、私はこれからも面白いことをいっぱいして、一人でも多くの人に発信していこうと考えています。