移住者インタビュー

Interview

Iターン30代農林漁業阿南市

家族全員が住みたいところ、 みんながやりたいことができるところへ移住しようと決めました

南 慶さん、智美さん

出身地:兵庫県(慶さん)、三重県(智美さん)
移住年:2021年
現住所:阿南市
職業:慶さん 株式会社情熱カンパニー
年代:30代

取材年月:2022年7月

長男の恒輝くんが小学校に上がるタイミングで移住を考え始めた南さん一家。家族で話し合いを重ねるうちに、自分たちが「理想とする暮らしとは何か?」、「家族全員の幸せとは・・・」といった漠然と思い描いていたイメージが明確に。それを実現しようと動き始めたところ、導かれるように移住の道が拓けていったといいます。自分らしく働き、暮らしていくことを大切に、豆炭コタツや柚子風呂など昔ながらの生活の知恵も上手に取り入れ、ゆくゆくはオフグリットな生活を目指しています。

--移住を考えるきっかけになったのは。お子さんを「フリースク―ルに通わせたいから」だったとか。

智美さん そうですね。最初の最初は、です。移住のことをいろいろ考え、調べていくうちに“フリースクールありきの移住”というのは、なくなっていきました。

慶さん 長男の恒輝が小学校に上がるタイミングだったので、子どもの教育環境を考えようと。恒輝は『森のようちえん』(自然環境を利用した幼児教育や子育て支援活動を行うNPOによって運営)に通っていたので、小学校も自然とふれあえる環境がいいなとか、娘の香江も同じようにフリースクールに通わせたいとか、僕は僕でサーフィンが好きなんで、サーフスポットがあるところに住みたい、智美は農業に興味があって・・・とそれぞれがやりたいこと、住みたい場所を考えるうちに、家族全員が本当に住みたいところ、みんながやりたいことができるところへ移住しよう!と決めました。

--移住先選びは難しかったのでは?

智美さん 全国を対象に移住先を考え、「旅行で行った北海道はいいところだった」とか、「沖縄の海もいいよね」って候補地を出して、それぞれの希望と照らし併せて、ちょっとずつ絞っていきました。それで最後に徳島か高知の2つに絞りました。

--高知と徳島ですか。

慶さん サーフィンがコンスタントにできるところって、僕が知っているのは、宮崎、千葉、高知、徳島のあたりなんですよ。高知、徳島は、お互いの実家(兵庫・三重)に近く、気候、生活環境も似ているイメージがあったので過ごしやすいかなと。フリースクールもそれぞれの県にあったので、1週間くらい夏休みをとって現地を見てみようと、家族で行くことにしたんです。

--移住の下見に来られたと。

慶さん 小学校やサーフィン、住む家の環境が知りたかったので、学校やサーフショップに行って話を聞いたり、市役所の人にも話を聞いて、家も見せてもらったりしました。

--徳島に決めた理由は何だったんですか?

慶さん 最初、高知県から周ったんですが、徳島に入った時にレンタカーが脱輪するというアクシデントに遭いまして。そしたら近所の方たちが「大丈夫か?」って5人ぐらい集まって牽引し、助けてくださったんです。この時、人のあたたかさに触れ、これも何かのご縁かなと。もちろん教育環境、サーフィン環境、住環境も素晴らしかったということもありますが、人のつながりも感じられて、「徳島いいな」って。

智美さん そうそう。東京へ帰りつく頃には心が決まっていましたね。ここ(現在の家)を見学させてもらった時も、近所の農家さんがふらっと挨拶に立ち寄ってくれて。「どっから来たん?」とか、何気ない会話だったんですが、そういう人と人との関わりがとても自然で心地いいなと感じました。

--周囲は田んぼですし、お子さんの遊び場としても最高ですね。空き家バンクに登録されたばかりのいい物件だったと聞きました。

智美さん そうなんですよ。まるで私たちが徳島に来ることが分かっていたように、何もかもがポンポンと決まっていって、導かれているとしか思えないような偶然が重なり、移住への道が拓けていきました。

--お子さんの小学校については移住コーディネーターの笠谷さんから公立の小学校についても提案があったとか。

慶さん 近所の人達に見守られながら友達と田んぼの中を歩いて通学した思い出とか、雪が降った日に授業が1時間雪遊びになった話を聞かせてもらいました。笠谷さんと話しをしながら、自分の小学校時代のことを思い出し、公立小学校の良さについてもう1度家族で話し合うきっかけをいただきました。そして私達が思い描く暮らしや生き方には、公立小学校がぴったりだねという話になり、長男は今、近くの公立小学校に通っています。

--他に移住前に予定していたことと変わったことはありますか?想定していた移住のイメージと違ったこととか。

智美さん 地元の方々とお付き合いさせてもらえるまで、時間がかかるかなあと覚悟していたんですが、そんなことは一切なくて。長男の入学式で「よろしくね、いっぱい遊ぼうね」と声をかけてもらったり、散歩している方が「南さんやろ?」「よう来てくれたな」と話しかけてくれたり、予想以上のあたたかさに驚いています。地域の方が集会で私達のことを紹介してくださったり、地域の行事に誘ってもらったりして、いつも色々な方と出会うきっかけをいただいています。感謝の気持ちしかありません!!

慶さん このあたりの田畑や山、川の風景は本当にキレイです。まわりに生き物もいっぱいいて、春はうぐいす、夏はカエル、イモリ、魚やザリガニもいます。5〜6月は、玄関を開けたらたホタルが飛んでいるのが見られます。想定していたより、すごくいい環境です。

--移住後、環境の変化に体調を崩される人もいますが、どうでしたか?気候も変わって大変なこともあったのでは?

智美さん 冬は意外と寒かったですね。周りが田んぼで、遮るものが何もないというのはいいところでもあるんですが、窓を締めていても隙間風がピューピュー入ってきました。でも、エアコンを使わずに1年過ごせました。私はもともとエコな生活に興味があって、移住を機に今までの電気に頼りっぱなしの生活から古き良き日本の暮らしの知恵をとり入れた生活がしたいと思っていたので。

--え!? いけましたか?

智美さん 冬は灯油ストーブと豆炭コタツだけで過ごしたんですけど、1部屋にみんな集まって過ごして、結構楽しかったです。

慶さん 豆炭コタツは温かくて気持ちよかったです。冬は柚子風呂も香りを楽しめてよかったですよ。

智美さん 畑に柚木の木があって、とり放題(笑)。毎日10個ぐらい入れて贅沢に入ってました。電気やガスの恩恵を受けながら、ゆくゆくは自家発電や火のある暮らしをしていきたいと思っているので、ちょっとずつ楽しみながらやっていこうと思っています。

--この環境にいたら、その夢も叶いそうですね。

智美さん お野菜もそうですが、ご近所の方からジビエやお魚をいただく度に、季節ごとの自然の恵みをお裾分けしていただきながら生きているというのを実感しますね。自然と共に歩んできたこの地域の人たちの暮らしを、味わわせてもらっていると感じます。

先輩移住者として、これから移住を検討される方に何かアドバイスをお願いします。

智美さん 移住先でどんな暮らしがしたいか、具体的なイメージがあるといいと思います。「こういうところでこういう風に生きていきたい」というような。私たちもたくさん話をしました。妥協せず話し合いをする中で、お互い、すごく自分を見つめ直しました。「どう生きていきたいか?」とか、「自分はどうしたいか?」っていうところを大事にしましたね。それはスゴくいい時間で、大事なことが整理されたことで、暮らしがとてもシンプルになりました。自分自身の再発見もできたし、実はあんまり必要のなかったことに気付いて、手放すこともできたし、移住を考えたことはいい経験になりました。

慶さん 子どものために・・・と考え始めた移住でしたが、やっぱり親自身が楽しい生活をしなかったら、子どもが楽しい生活はできない。子どもは親を見て育つから、まずは自分が楽しいと思える選択をしたいな、と思います。

智美さん 「子どもたちのために素晴らしい教育環境や生活環境を!」と何かを“してあげる”ことばかりに目がいってましたが、結局私たち親が“どう生きるか”が大事だったんだなって。

慶さん 東京にいたとき、週末はサーフィンに行ったり、キャンプに行ったりして楽しんでいたんですけど、平日も楽しみたいなと。仕事は今、農業法人で働いているんですが、自分たちが育てた新鮮な野菜を持ち帰って食べられるし、他の人にお裾分けするのも充実感があっていいなと思うし、周りにも喜んでもらえるし。もちろん家族も喜んでくれて、そういう楽しいことが良い循環を生み出してるなっていう感じがします。

智美さん お金を払っても買えない幸せとか楽しさが、いっぱいありますね。

--お子さんが小学校に上がることが家族全員の転機になりましたね。

慶さん そうですね。仕事もガラッと変わりましたし、どんどんおもしろいことが増えていっている感じがします。今は昼休みの1時間休憩のときに近くの海へ行って、お弁当を食べて、海水浴もしています。この前は僕1人しか入ってなかったので、貸し切り(笑)。さっぱりして気持ちいいんですよ。

智美さん 自分が何が好きで何がしたいか分かったら、好きなことだけして暮らしたいですよね。無理やり我慢してやっていたことを発見できて、1個ずつ減らしていこうって思うようになりました。

慶さん 僕は農業とか食に興味があって、サーフィンやアウトドアが好き。そういう自分の幸せを大切にして、自分らしく働き、暮らしていきたいです。

--いろいろお聞かせいただき、ありがとうございました!