こんにちは。とくしま若者回帰アンバサダーのふうきです!
この度、阿南市加茂谷地域で「加茂谷すだちパーク」を運営する井出さんを取材しました。徳島を代表する特産品であるすだちを軸に、新しい農業のあり方や地域の可能性を模索している方です。実際にお話を伺いながら、移住の経緯や現在の取り組み、そして徳島で働くこと・暮らすことについてお聞きしましたので、その内容をご紹介します。
すだち産業の未来を見据えて──加茂谷から始まる新しい農業のかたち
徳島県阿南市の山あいに広がる加茂谷地域は、自然豊かな風景が広がるのどかな地域です。この地域で、すだちの栽培と新しい農業の形づくりに取り組んでいるのが井出さんです。
井出さんは関西の大学を卒業後、東京でキャリアコンサルタントとして働いていました。その後、東日本大震災をきっかけにエネルギー問題への関心を深め、再生可能エネルギー分野に特化した人材紹介事業の立ち上げにも関わった経験があります。都市部でキャリアを積んできた井出さんですが、2020年、コロナ禍を機に徳島へ戻り、実家の家業でもあるすだち農家を継ぐことを決断しました。
移住の背景には、徳島のすだち産業が抱える課題への危機感がありました。徳島県は全国のすだちの大部分を生産する産地ですが、生産者の高齢化が進み、将来的な生産量の減少が懸念されています。県内の生産者の平均年齢は70代後半に達しており、担い手不足は大きな課題となっています。
井出さんはこうした状況を踏まえ、農業を継承するだけでなく、持続可能な形で発展させていく必要があると考えたといいます。すだちの生産規模を拡大しながら効率的な農業経営を目指すとともに、売り方や活用方法にも工夫を加え、付加価値の高い事業として成長させることを目標に取り組んでいます。

都市での経験を生かした移住のプロセス
井出さんの移住は、突然の決断ではありませんでした。東京で働いていた頃から、徳島のすだちを首都圏でPRする活動に関わっており、飲食店やイベントなどで紹介する中で、都市部の消費者の反応を直接感じる機会があったといいます。
実際に紹介してみると、すだちは多くの人に興味を持ってもらえたそうです。こうした経験を通じて、「農業は儲からないと言われがちですが、売り方や発信の仕方によって可能性は広がるのではないか」と感じるようになったといいます。
また、移住にあたっては段階的なステップを踏みました。東京の仕事を続けながら、リモートワークを活用して徳島での農業にも関わる「二拠点生活」を実践し、徐々に拠点を徳島へ移していきました。この期間に、自分がなぜ徳島で活動したいのかを改めて考えたり、地域でのネットワークを広げたりしていったそうです。
井出さんは、地方に戻ることをネガティブに捉える必要はないと話します。都市での経験を生かしながら地域で新しい取り組みに挑戦することも、キャリアの一つの選択肢として考えられるのではないかと感じているそうです。
農業に新しい価値を加える取り組み
現在、井出さんが取り組んでいるのが「加茂谷すだちパーク」という構想です。
この取り組みでは、農園を単なる生産の場として閉じるのではなく、人が訪れ、地域の自然や景観を楽しめる場所として開いていくことを目指しています。井出さんは、ヨーロッパの農村地域のように、美しい農村景観そのものが価値になる農業のあり方に関心を持っているそうです。
例えば、畑の景色を眺めながらゆったりと過ごす時間や、自然の中で地域の食を楽しむ体験など、農業と観光を組み合わせた取り組みも構想しています。農園を訪れた人が自然の豊かさを感じながら過ごせる場所にすることで、地域の魅力を発信する場にもしていきたいと考えているとのことでした。
こうした取り組みの一環として、海外からのボランティアの受け入れも行っています。いわゆる「ギャップイヤー」を利用して日本を訪れている若者が、一定期間滞在しながら農作業や地域活動に参加しているそうです。すだちの収穫や畑の手入れといった作業を手伝うだけでなく、加茂谷地域を活性化する取り組みにも関わっているといいます。
取材当日も、実際にボランティアの皆さんが作業している畑を案内していただきました。現場では、井出さんが英語で声をかけながら楽しそうにコミュニケーションを取っている様子が印象的でした。ボランティアの皆さんも笑顔で作業に取り組んでおり、農園が国際的な交流の場にもなっていることを感じました。最後には皆さんと一緒に集合写真も撮影し、和やかな雰囲気の中で取材を終えることができました。

また、井出さんは、地主との調整や行政との連携、販売先との商談、スタッフのマネジメントなど、経営者としての役割も多くあります。現場作業は社員やスタッフに任せながら、事業全体の方向性を考えることが主な仕事になっているそうです。
さらに将来的には、すだちを海外にも広げていきたいという展望もあります。和食が世界的に注目されている現在、柑橘類としてのすだちの魅力を海外市場に発信していくことで、新しい可能性が生まれるのではないかと考えているそうです。
移住を考える人へのメッセージ
取材の最後に、移住を検討している人へのメッセージについて伺いました。
井出さんは、移住を人生の大きな決断として重く考えすぎる必要はないのではないかと話します。地方での暮らしや仕事が自分に合うかどうかは、実際に経験してみないと分からない部分も多いため、まずは試してみることも一つの方法だといいます。
近年はリモートワークの普及もあり、都市と地方を行き来する働き方や、複数の拠点を持つライフスタイルも現実的になってきました。そうした柔軟な働き方の中で、地方で活動することを選択肢の一つとして考えてみるのもよいのではないかというお話が印象的でした。
徳島の自然豊かな環境の中で、すだち産業の未来を見据えた取り組みを続ける井出さん。加茂谷での挑戦は、地域資源を生かした新しい農業のあり方や、地方での多様な働き方を考える上でも、多くのヒントを与えてくれるものだと感じました。

最後に
今回、加茂谷すだちパークを訪れ、井出さんのお話を伺う中で、農業の可能性や地方で働くことの魅力について改めて考える機会になりました。都市での経験を生かしながら地域で新しい挑戦を続けている姿がとても印象的で、すだち産業の未来に向けた取り組みのスケールの大きさにも驚かされました。
また、農業というと「畑での作業」というイメージを持つ方も多いと思いますが、実際には経営や企画、地域との連携など多様な役割があることも感じました。こうした視点から地域の産業を見てみると、地方での働き方にもさまざまな可能性があるのではないかと思います。
今後も、とくしま若者回帰アンバサダーとして、徳島で挑戦している方々の取り組みや地域の魅力を発信していきたいと考えています。引き続き応援よろしくお願いします。

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