県職員(徳島県立文書館)
関麻希さん
徳島県に関する古文書や公文書を収集・保存する「徳島県立文書館」。2023年から働く関さんは、夫と息子、2匹の猫とともに、大阪府から移住しました。
前職は大阪府立高校の日本史教諭。大阪府教育委員会で勤務していた2021年の夏、大学時代に所属していた研究室のOB・OGメーリングリストに、一通のお知らせが届きます。「それが徳島県立文書館の古文書専門職員募集。修士号を持っていなくても応募できたのと、以前から『いつかは地方に移住して、自然豊かなところで暮らしたい』とぼんやり考えていたので、軽い気持ちで受けてみたんです」。
結果は見事合格。内定をもらった矢先、関さんの妊娠が発覚します。「私自身も本当に驚いたのですが、当時の石尾館長が県に掛け合ってくださって。採用日から産休と育休を取得して、勤務開始日を1年延ばしてもらいました」。
2022年4月に出産し、育休期間中に進めた移住準備。「片道45分以内で、徳島市内の文書館に通えること」「夫の『農業がしたい』という希望を叶えられること」を条件に、居住地を探しました。
徳島市に接する神山町や佐那河内村などが候補に挙がるなか、最終的に選んだのは、阿南市の山あいに位置する加茂谷地区。大阪府で行われた就農イベント「新・農業人フェア」で出会った、NPO法人「加茂谷元気なまちづくり会」のメンバーの笑顔に夫婦で惚れこみ、現地訪問を経て移住先に決めました。
住まいは、「加茂谷元気なまちづくり会」が築約40年の古民家を紹介してくれました。2階建て5LDKで1階はリフォーム済み、畑と駐車場がついて、家賃はなんと月2万円。那賀川に近い自然豊かなロケーションに「身体が喜んでいる気がする」と微笑みます。
夫も、移住のタイミングで摂津市役所を退職し、阿南市の地域おこし協力隊に。移住のきっかけとなった「加茂谷元気なまちづくり会」の活動をサポートしながら、すだち農業や遍路宿の開業準備に取り組んでいます。「大阪にいた頃はマンション暮らしで、ご近所づきあいは皆無。加茂谷に来てからは、地域と関わりながら生活ができるのが嬉しくてありがたいです。夫には草刈りや掃除のような出役や消防団の役割がありますが、移住前にきちんと説明してくださっていたので、それらもポジティブに楽しんでいます」。
自宅から文書館までは車で約30分。満員電車や渋滞とは無縁の、快適な通勤時間を過ごしています。「季節の移り変わりをしっかりと感じられる、自然豊かな通勤路。移住して2年が経っても毎日自然の風景に感動します。フロントガラスからたくさんの緑が目に入って、スマホの画面を見る時間も減ったので、目の疲れがかなり軽減されました」。
徳島県立文書館では、古文書の解読や展覧会の企画などを担当。「徳島県の歴史はまだまだ知らないことばかりで、地名ひとつ取っても勉強になっておもしろい。日々の仕事を通して、自分自身が楽しませてもらっています」。
目下力を注ぐのは、大量にある古文書の整理と、電子公文書対応の新システム構築。根底にあるのは、高校教諭時代から変わらない「おもしろい歴史を伝えたい、届けたい」という想いです。「貴重な史料を広く公開して、徳島の歴史をより多くの人に伝えることが、地域資源の掘り起こしや活性化にも繋がればいいなと思いますね」。
【おすすめスポット】
「TOKUSHIMA COFFEE WORKS」や「ACARICAFE」など、素敵なカフェがたくさんある阿南市。美味しいグルメをほとんど並ばずに食べられるのはぜいたくなことだな、と感じています。
恐竜をモチーフにした遊具がある勝浦町の「星谷運動公園」も、開放感にあふれていてお気に入りです。徳島県の公園は大阪に比べて広くて人が少なく、ゆったりと遊べて最高です。
【メッセージ、アドバイス】
大阪市まで車で約2時間30分と、思ったより近い徳島。大阪に住む両親も「田舎ができた」と嬉しそうで、毎月のように遊びに来てくれます。空気が美味しくて、野菜が新鮮で……本当にぜいたくなところなので、大阪の人はどんどん移住した方がいいと思うほど(笑)。迷うようなら、ぜひ一度来てみてください!