2021年4月から徳島に移住してきた村瀬志津さん49歳。 東京・吉祥寺でパン屋を11年営んでいましたが、今は新天地・徳島で『人生リスタート』の真っ最中です。 東京から徳島へと大きく人生の舵を切った村瀬さんの徳島での暮らしや、その中で大事にしていることを伺いました。
自分のお店を持つという夢を叶えた30代
ー村瀬さんのご出身はどちらなんでしょうか?
神奈川県の茅ヶ崎市で生まれ、海老名市で育ち、25歳頃に結婚がきっかけで東京に移住しました。 元々音楽が好きなので、その前からもサブカルの街・杉並区や下北沢を『私の庭』というくらい出歩いていました(笑)
20代は「自分のお店を持ちたい!」という漠然とした夢を持っていました。当時バイトしていたのも個人のオーナーが経営するカフェ。ケーキがとても美味しかったんです。そこで人生の方向性が固まっていきました。
その後いろいろ別の職業を経験するんですが、2010年、30代半ばで「fig」という屋号のパン屋を吉祥寺に開店することが出来ました。 吉祥寺という場所柄と、真裏に小学校がある事もあり、結構お客さんも来てくれていました。
ーそんな夢を叶えたパン屋さんですが、一旦区切りとして、移住したんですよね?
はい、夫は次男なので結婚した時は地元に戻るとは思わず、自分でもまさかと思ったんですが(笑) 11年経営したパン屋を閉店して、2021年に夫の故郷・徳島県の、新しい職場のある徳島市に移住しました。
コロナ禍によって夫が仕事に疲れたので地元の方で転職したい、というのが大きなきっかけになったんですが、他にもあります。 実は、お世話になっていたカフェのオーナーさんがお店を閉店した半年後位に病気で亡くなっちゃったんです。夫は全くパン屋に関わってなかったので、ふと「自分が倒れたらお店はどうなるんだろう」っていう思いが頭によぎったんです。皆に迷惑をかけるのだけは嫌だなと。 また、1人でやるのにも限界があって、自分が思い描いていたことが出来なくなってきていたのもあります。 色々重なったことがちょうどいいタイミングかな、と思って、店を閉めることにしました。
人生を振り返って後悔しないよう、好きな事をやっていきたい
ー移住して今は・・・パン屋さんはされていないんですね?
パン屋の時は自分の余裕が無くて、正直大変でした。
ちょうど誰も知り合いもいないまっさらな今、「自分の人生を振り返った時に後悔することっていっぱいあるから、それをちゃんとやっていこう」と思いました。 モノ作りは凄い好きなので、作家さんレベルまではいかなくても、”楽しい”を皆に共有出来たらいいなと思って、いろいろと好きなことに取り組んでいます。
中でも今はシルクスクリーンを中心に作品を作っています。 きっかけは、2023年に参加した神山塾(神山町で展開している求職者支援訓練)でチームTシャツを作ったことでした。皆すごく楽しそうにやってくれたのが嬉しくて、「じゃあこれをやる人になろう!」と思い立ちました。
人と接する時の壁が取れ、友達が増えた
ー大都会・東京から徳島に移住した時の印象はどうでしたか?
全然田舎だとは思いませんでした。「小さい頃(海老名)と同じ景色がある!」でしたね。 移住当初は自動車に乗っていなかったので、ひたすら散歩してたら素敵なレトロな建物がいっぱいあって、これって徳島の売りになるのにな、とか思ったりしてました。 コロナ禍が明けて神山町や上勝町、佐那河内村に行ったりするうちに、次第に知りあいが増えていったんですが、徳島でまだ嫌な人に会ってないんですよ! 最初は「阿波弁喋ってないと皆引くかな」とか思ってましたが、やっぱりお接待文化が染みついているというか、凄くして下さることが温かいなと感じます。
ー徳島市で暮らして春で丸3年、何か自身の中で変化は感じますか?
友達も今の方が多いんじゃないかってくらい、知りあいが出来ています。 元々あんまり人と接するのが得意じゃなくて、コミュニティに属したりもしなかったんですが、こっちに来てその壁が取れて、色んな所に行って色んな人に会ってみたいと思うようになりました。 お酒も全然飲めなくて飲み会も絶対行きたくなかったけど、こっちに来て行って「あれ、楽しい!」ってなって。人が居心地よくしてくれるんだなって実感しています。
去年からすごく楽しいんです、私(笑)
ーそんなコミュニティの一つが、お話を伺っているここ「PARKET」、移住者交流会でもお世話になった場所で、村瀬さんもここの本棚オーナーさんなんですよね?
はい、定期的に図書係も務めながらシルクスクリーンのワークショップもしています。 毎月本棚の内容を変えていて、1月は「芸能と民芸」をテーマにしていました。2月は『きょうの猫村さん』でお馴染みの「みんなの知らないほしよりこ」をテーマにしています。
目標は『un peu』無理せず少しずつ
ー今後の目標を聞かせてください。
封印しようと思っていたパン作りやお菓子作りですが、神山塾で「今までの事は誇っていいことだから、もっと自信持っていいんじゃないか」と言ってもらえたんです。
屋号の『un peu(アンプ)』は、フランス語で”少し”っていう意味なんですが、その通り、無理しないように少しずつ少しずつ色んなことをやっていきたいです。
吉祥寺はオシャレな街なので、その分、住んでる皆さんの意識が強くて、それに疲れたのかな。だから移住してきて本当に良かったし、呼ばれてたんだなと思います。
ーこれから移住してくる方へのメッセージをお願いします。
全然怖がることなく来て欲しいなと思います、皆さんすごく温かく迎えてくださいます!
ーーー編集後記ーーー
インタビュー後に私もシルクスクリーン体験をさせていただきましたが、とっても楽しかったです!村瀬さん手書きのフクロウのイラストは、ほんわかとした村瀬さんの人柄そのもののよう。これからも『un peu』で徳島暮らしを楽しまれる姿を応援しています♪(清水)