2024年2月10-11日と2月24-25日の2回にわたり、「複業人材活用拡充プロジェクト」の現地フィールドワークを実施しました。本レポートでは、プロジェクトの概要や2回の現地フィールドワークの様子、参加いただいた皆さんのアンケートなどをご紹介します。
1)徳島県「複業人材活用拡充プロジェクト」について
徳島県「複業人材活用拡充プロジェクト」は、地域と関わりたい方と徳島県内の各地で地域イベントをおこなうキーパーソンをつなぐ、徳島県が主催するプロジェクトです。
令和5年度は「地域イベントの担い手とつながる」をテーマに掲げ、徳島県内て?行われる地域イベントや、観光振興活動に携わるキーパーソンとの対話・交流を通して、地域と複業人材が継続的で広がりある関係を築く機会を創出することを目指し、事前説明会、現地フィールドワーク、オンライン交流会を実施しました。
2)プロジェクトの参加者について
本年度のプロジェクトには17名の方に応募いただき、東京在住の方だけでなく、徳島に近い大阪、兵庫、岡山や四国の香川、高知、他にも福岡や岩手など、かなり広範囲にお住まいの皆さまにお集まりいただきました。
年齢層は、全体の約6割が20代、30代を占めており、特に若い世代の関心の高さが目立ちました。
<プロジェクト参加理由>一部抜粋
・現在大学には神戸の自宅から通学をしており二拠点生活に関心があります。また、これからのライフスタイルを考えていくうえで、地方複業にも関心があります。(20代・男性)
・現在、岡山市で暮らしておりますが、高校卒業までは、香川県の小豆島で生まれ育ちました。小豆島で私が毎年楽しみにしていたのが、地元の太鼓祭りです。今でも、祭りの時期には帰省をし、参加しています。しかし、少子高齢化により、祭りの参加者は年々減少しています。この状況を打破し、少しでも地元が元気になるために貢献したいという気持ちを常に持っています。(20代・男性)
・千年の歴史を誇る黒石寺蘇民祭という、地元岩手県の奥州市の祭りが今年で最後の開催となることもあり、若い世代として少しでも伝統保存に関わりたいと強く感じています。地域活性化、伝統芸能や祭事に関心があり、外部者として微力でも役に立てたらと思い参加することにしました。(20代・女性)
・クリエイターとして、活動場所の地域性、文化を大事にしながら創作する活動を国内外でしてきました。徳島に眠っている財産を掘り起こし、育み、世界に発信するお手伝いが出来たらと考えております。(50代・男性)
・学生時代の経験から社会人になっても地域づくりに関心があります。徳島県はじめ四国は1度しか訪問したことがなく阿波踊りや渦潮のイメージが強いですがその他の現地の魅力を地元の方との交流などを通じて肌で感じたいと思い、参加しました。(30代・女性)
・一つ目の理由は、地域創生関連のセミナーで徳島県の取組みを拝見することが多く、徳島県の地域実態・実状についてリアルに体験(体感)してみたいと思ったからです。二つ目の理由は、祭り好きなので今回の地域活動に興味があり、もっと詳しく知りたいと思ったからです。(50代・男性)
・出身県の徳島を映し鏡にして、自分が望む社会や価値について考え、如何に仕事をし、社会の為に価値を残せるかを考えたく応募しました。(40代・女性)
3)現地フィールドワーク1回目レポート
2024年2月10-11日に1回目の現地フィールドワークを実施し、地域活動を行う団体の担当者等からビジョンや課題について直接お話を伺い、交流や意見交換・質疑応答を行いました。
1回目のフィールドワークは、徳島県で実施される地域イベントについて、理解と愛着を深めながら、地域か?抱える課題の解決に向けて関わり方を見つける機会になりました。参加者は下記のスケジュールで、3つの地域、4つの団体を訪れました。
地域活動①(勝浦町) 勝浦さくら祭り・生名ロマンの会
生名ロマンの会は、徳島県勝浦町の生名地区の地域住民を中心とした任意団体です。美しい景観を守るため、生名谷川を拠点とする、やすらぎの空間を整備・保全し、住人にやすらぎの場所を提供するとともに、農山村を求め楽しむ人々との交流拠点として、幅広い活動を推進しています。毎年3月後半から4月にかけて、生名ロマンの会を中心に開催している「勝浦さくら祭り」は、2023年3月で20回目を迎えました。
徳島県下の桜の名所として認知が進み、期間中はおよそ3万人の来場者で賑わうイベントですが、一方で、「人材不足、後継者対策」「関西圏や本州へのPR」「舟下りの水路の延伸」などの課題もあります。
生名ロマンの会の皆さまとの意見交換や桜まつりの会場近辺を散策する中で、今後下記のような取り組みを構想、参加者と期待しているということでした。
・みかん収穫バイト
・ふれあいの里さかもとサポート
・各種体験講師の担い手(こんにゃくづくり・ピザづくり・草木染めなど)
・地元イベントのサポート(企画・設営・運営など)
・生名ロマンの会の後継者
・民泊運営
・カフェ開業 など
地域活動②(美波町) 日和佐ちょうさ保存会
日和佐では、町内8地区それぞれで太鼓屋台"ちょうさ"を所有しており、各町内会が独立して運営していましたが、急激な過疎化とさらなる人口減少を見据え、平成22年に町内の有志により"日和佐ちょうさ保存会"を設立しました。
一年の豊漁豊作を祝う秋祭りは、抑揚のある太鼓のリズムに合わせて、何台ものちょうさが大浜海岸になだれ込む姿が壮観です。町内8地区が太鼓屋台を奉納運行し、大勢で境内を練り歩いたり、 海へ飛び込んだりする様子が観衆を楽しませています。
老若男女、町民全体が参加する祭りですが、「担ぎ手以外の担い手の減少」「祭りを開催する意味の伝承」「祭りを通じた人材育成」などの課題に直面しています。
日和佐ちょうさ保存会の皆さまから取組紹介や現状をお伺いし、実際にちょうさの神輿を見学させていただきました。
地域活動③(那賀町) 阿波人形浄瑠璃「丹生谷清流座」
那賀町では過疎・高齢化が進み、産業はもとよりさまざまな伝統文化活動において後継者不足が深刻な状況です。そのような中で、町内に唯一存在する人形座の存続が危ぶまれている現状を知り、地元青年団が中心となって阿波人形浄瑠璃「丹生谷清流座」を結成しました。
阿波人形浄瑠璃を通して、伝統芸能の継承のみならず、農村舞台をはじめとする地域が守ってきた歴史的文化資源に新たな価値を見出し、地域住民が行政や県内外の人形座、芸術家などと連携・協力し、活用することで、地域の魅力を高め、交流人口の増加に寄与しています。
地域コミュニティの再生や、農村舞台の新たな可能性を求め、音楽イベントや杜の中のレストランとしての活用などにも取り組んできましたが、「後継者、担い手の不足」「PR不足」「町にある資源『ほんもの』の伝承」「町の資源を活かす方策」などに課題があります。
まずは丹生谷清流座の人形浄瑠璃を見学した後に、人形浄瑠璃体験や意見交換を行いました。お話をしていく中で特に下記のような取り組みを今後強化していきたいとのことで、参加者からのアイデアや提案などコミュニケーションが図られました。
・町との関係人口の創出
・後継者育成、協力者の増強
・地域外への広報・PR
・地域住民、特に高齢者の活力維持にむけての企画、アイデア
他にも1回目のフィールドワークでは、美波町で活動する藻藍部を訪れました。藻藍部では、藻場の再生プロジェクトやアイコ?を使った地場産業の開発、地域の店舗・飲食店と連携した販売、フ?ルーカーホ?ンの創出、藻場や漁場再生資材の開発などに取り組んでいます。
参加者の皆さんは、各地域で地域活動を行う団体の皆さんとの交流や意見交換を行い、自身の関わり方について思案していました。
4)フィールドワーク1回目 参加後アンケート
今後、徳島県とどのような関わり方ができそうですか?
・自分が出来る事は映像制作ですが、本業も現在はあるため制作時間や関わる時間も限られております。 地域の行事にまずは参加してみる事からはじめて、余裕があれば素材撮影しSNSの手伝いが出来たらなと思っております。
・この2日間を通じて徳島県を好きになりました。好きになったからこそもっと徳島の魅力を知りたく思います。
・物理的な制約があり定期的に徳島に行くことは難しいが、今回できたご縁を活かして徳島情報を発信することや、また観光することは可能だと思った。
・まずは、この二日間で伺ったイベントやお祭りに参加して、地域住民の方々との関わりを持っていきたい。また、今回徳島県の良さを多く知れたので、個人的に観光でも訪れたい。
・秋祭りに実際に担ぎ手として参加し、共にお祭りを盛り上げていきたい。また私の地元の太鼓祭りとも一緒になって、お互いに担ぎあうなどの協力ができればと思う。
ー徳島県の地域の魅力や、地域活動を行う団体・企業との共創の可能性はどんなところですか?
・地域をよくしようという熱意に溢れていて、外部者にも門戸が開いているところに可能性を感じました。
・まずは、地域住民の方々が暖かく我々を迎え入れてくれ、地元の活動に熱心に取り組む姿が、全国でも見本となるような素晴らしさだと感じました。
・全ての団体が、より多くの人に参加してほしい、SNSでのさらなる発信をしていきたいとの考えを持っていたので、まずは実際にイベントへ行ってみる、オンラインを通しても交流するといった可能性があると考えています。
・県外への訴求を見据えたコミュニケーションづくり
・SNSでの発信のお手伝い、素材や編集物の提供
・文化交流活動
5)現地フィールドワーク2回目レポート
2024年2月24-25日に実施した、2回目の現地フィールドワークでは、徳島県内唯一の村である佐那河内村と、美馬市内の事業者が運営する施設などを訪れ、地域活動を行う団体や事業者のビジョンや課題について担当者から直接お話を伺いました。
地域活動①(佐那河内村) 一般財団法人さなごうち
徳島市から車で30分という立地にあり、山と川と空を満喫できる自然豊かで魅力溢れる佐那河内村は、徳島県でたった一つの「村」です。佐那河内村では、次世代へ贈る、新しい光景・ものか?たりの創出を目指し、『さなごうち新ものがたり創出事業』をスタート。この村で、地域の生活や暮らしを守り、地域に伝わる生業・暮らし・文化・景観・コミュニティを将来の世代に継ぐことを目的として活動している「一般財団法人さなごうち」が中心となり、村内の買い物、食事、体験、観光、宿泊ができる場所を網羅したパンフレットを制作するなど、村の情報発信メディアの一つとして村の活性化に繋げていこうと取り組んでいます。
フィールドワークでは村内のカフェ「POST GARDEN」でランチをしながらオリエンテーションをおこない、佐那の里(物産市場)、 山神果樹薬草園、 嵯峨天一神社を訪問した後、ワークショップを実施しました。柔軟な考えを持つ参加者の皆さんと、村の活性化と人の呼び込みをするアイテ?アについてディスカッションしました。
地域活動②③(美馬市) アドリブ大學/レトロ活版印刷体験
地域×人×スキルの連携で新たなネットワークを形成し、人との繋がりを深めるコミュニティを運営するアドリブ。「学べる工場」で繋がる、持続可能なコミュニティー大學、というコンセプトのアドリブ大學は、人との有機的つながりや、共感・共有・共創を通じ、新しい価値を創造する場であり、生徒は自分のスキルをシェアして、地域に賑わいをもたらす活動に取り組んでいます。
ここアドリブは活版印刷全盛期の頃から、時代の流れとともに印刷を続けてきたナカガワアド株式会社が、自社工場を「泊まれる工場」としてリノベーションした場所となっています。「体験」ではなく「体感」、「記録」ではなく「記憶」に残る場として提供しており、クリエイティブな仲間たちがこの場所に集まり自由な発想やインスピレーションが湧く空間。今回は「レトロな印刷体験」を行い、参加者は各自フォーマットのない名刺を作成しながら、1泊2日のプログラムを通して体感したこと、記憶に残ったことなどを思い返しながら参加しました。
地域活動④(美馬市) 体験交流施設「美村が丘」
眼下に美馬市のうだつの町並みが広がる交流促進宿泊施設「美村が丘」は、宿泊施設やコテージを完備しており、屋根付きのテラスで雨の日もバーベキューを楽しめる施設です。予約をすればジビエ(鹿肉)のバーベキューもできます。山を下れば吉野川を隔てて、「四国一の清流」である穴吹川も間近にあり、美馬市のおすすめスポットです。
フィールドワークでは、交流促進宿泊施設「美村が丘」の利活用を目的に、運営事業者から美村が丘の今までの取組や今後どんな場所にしていきたいかなどを伺いながら、参加者からのアイデア出しや意見交換を行いました。
6)フィールドワーク2回目 参加後アンケート
<今後、徳島県とどのような関わり方ができそうですか?>
・地域のリソースがたくさんあって、それを必要な人に届けるかかわりや、ランドマークのブランディングにむけたコーチングなどでかかわれそうだと思った。
・人と人とのつながりが起点になり、「とりあえずあそこに行けば何か面白いことがありそう」という期待感がその土地を訪れる理由になるというのが、今後の観光の姿になって欲しいと思っている。
・今回をきっかけにコミュニティーとして今後も継続的に関わっていきたいと思いました!
・ビジネスもプライベートも分け隔てなく、今後とも徳島の方々と関係人口化していきたいと思いました。
・当面は、地域に何度かお伺いできたらと思います、観光や、開墾作業など。 仕事面では、長い面で何か関われるものを探していけたらと思い、つながり作りを少しずつ。
・自分にとって特定の地域にフルコミットするということの敷居は高い。 だからこそ、まずは自分の身の回りのコミュニティと徳島県とのハブとして、都会のビジネスパーソンを徳島県という場所との接点をつくるための一助になりたいと思っている。
<徳島県の地域の魅力や、地域活動を行う団体・企業との共創の可能性はどんなところですか?>
・若さを活かしてプロジェクトのお手伝い
・写真、映像制作スキルを活かした関わり
・自身で運営している対話をするゼミとの連携、若い世代との繋がりの創出
・対話イベントの開催により、密度の高い関係性を構築、新たな機会の可能性
・コミュニティの構築、アイデアの創出など
・徳島観光コンテンツ検討
・コミュニケーションベースの企画提案あるいはコーチング
・佐那河内村では、アイデア出しや制作・情報発信など作業面でもお手伝いできる機会があればぜひ参加したいと思いました。ナカガワアド・美村が丘さんは新しい取り組みをされている段階でしたので、一緒に作り上げるような心持ちで関わっていけたら嬉しいです。
・地域課題、団体課題を、ITで解決していきます。 まずは小さいところからスモールスタートで始めていくイメージをしています。
・美村が丘が、どのような賑わい作りにつなげられるかが、関心あります。
・アイデア出しや制作・情報発信など、一緒に作り上げるような心持ちで関わっていけたら嬉しいです。
本プロジェクトに参加いただいた皆さんと地域事業者さんとの今後のコラボレーションが楽しみです!