移住者インタビュー

Interview

Iターン30代専門・その他つるぎ町

川がある田舎の暮らしを望む人は、これからもっと増えると思っています

牛尾健さん

出身地:兵庫県

移住年:2014年

現住所:つるぎ町

職業:アウトドアガイド

大歩危でラフティングのガイドをしていた牛尾さん。2010年に美馬市で『Trip 四国の川の案内人』を開業し、2014年につるぎ町に移住。穴吹川や吉野川、剣山山系を中心にアウトドアガイドを行っている。自然と接する中で感じる、つるぎ町の魅力についてお話を伺いました。

川がきれいで、水温が高い。
剣山山系の沿線というアウトドアガイドには最高の立地

--以前はどちらにいらっしゃったんですか?

牛尾さん:大歩危に10年くらい住んで、ラフティングのガイドをしていました。

--ここに決めた理由は?

牛尾さん:単純に、「川、きれい」って思って。このあたりは標高50mくらいの場所なんで、水温が高いんですよ。川遊びをするのに、水温が高いというのは結構重要なんです。きれいな川というのは標高が高いので水が冷たい。子供なんかは夏でもちょっと入ったらすぐに体が冷たくなってしまう。そういう意味ではこの場所は川に接しやすい、いい場所ですね。冬場は山のガイドもやっているので、剣山の沿線で山の仕事もできるし、1年を通してガイドができるところを探していたので、ここが見つかってよかったと思っています。

--夏山のガイドはされないんですか?

牛尾さん:あたたかい季節は自分で山に行けてしまうんで、冬場のガイドが多いですね。本格的な冬山登山から、雪山で気軽に遊ぶスノーシュ―ピクニック、かんじきを履いて雪山を歩くツアーとかをやっています。

--どんな人が申し込みされるんですか?

牛尾さん:神戸、大阪、香川、東京…県外が多いです。徳島の人は身近すぎてガイドをつけてまで遊ぶことは少ないように思いますね。県内では地元の小学生を対象に川遊びを中心とした夏の体験ツアーが多いですね。

--学校で遊びを教わるというのはなんだか不思議な感じがします。

牛尾さん:子供と接する時は勉強っぽくするところもあるんですけど、自然と触れ合った楽しい体験を覚えていてもらいたいと思って、記憶に残るような仕掛けや演出は心掛けていますね。「今からあの岩に飛び移りましょう」とか、ちょっとしたことなんですけど、みんなテンション上がって喜んでやるんですよ。「川は危ない」という先入観を持っている子もいるので、まずは子供たちの警戒心をほどくところからはじめています。危ないこともありますが、結局、それも遊ばないとわからないことが多いですから。

より価値あるツアーを作るため、本州へも出かけています。

--“四国の川の案内人”という名前ですが、四国内を回っているんですか?

牛尾さん:四国の川遊びをガイドしてくれる会社って、僕が始めたときは全然なかったんですよ。インターネットで「四国・川」で検索するとラフティングが出てきたり、カヌーを持っている人が川を下りたいといった時の情報が少なかったので、全体的なガイドやアドバイスができればと。でも最近は地域密着のガイドが増えてきたので、そのエリアの方を紹介するようにしています。川のガイドだけなら僕でもできますけど、地域の案内があるとないとでは楽しさが違いますから。

--地域案内も重要なポイントですね。

牛尾さん:そうですね。だからといってずっとこの町にいるわけじゃないんです。地域を盛り上げ、もっと人が来るようにするためにも自分自身のスキルを上げたいと思っているんで、毎年2~3ヵ月は県外に出ています。カヌーなどの体験ツアーをメインにした修学旅行を受け入れているところを手伝わせてもらったり、本州の山や川へも行って経験を積むことで、お客さんの要望に応えられるようになりたいと思っています。

--より特別なコースやガイドを望む人もいらっしゃるんですね。

牛尾さん:お客さん自体が成熟してきて、コースやガイド内容の充実を求めるようになってきていますね。アウトドアというくくりも細分化していて、一般的にもなったし、アウトドア用品もわりと手に入りやすくなっていますよね。アウトドアツアーといえばアウトドア用品の販売店やメーカーが行うものが主流だったのが、最近体験だけの販売も一般的になってきたので、ガイドにお金を払ってくれる人が増えました(笑)。ひと昔前のアウトドアガイドってボランティアというイメージだったんですが、フランスでは山岳ガイドは国家資格だし、ニュージーランドも川のガイドは国家資格なんです。子供のなりたい職業にも消防士とかと並んでリバーガイドが入ってくるような、アウトドアの文化が確立している。今後日本もそこに追いついていくだろうなと思っています。

将来的には多彩な体験を提案できるよう、仲間を増やしたいですね。

--普段の生活で困ることはありませんか?

牛尾さん:特にはないですね。人の多いところはしんどいと思う性質なんで(笑)

--牛尾さんのようにアウトドアで移住して来られる人は他にもいらっしゃるんですか?

牛尾さん:ラフティング関係で夏場だけこちらで仕事をする人はいますが、年間を通して生計をたてるとなると難しいので、移住はハードルが高いかも。まずは観光などでちょっと遊びに来て町を知ってもらえるといいと思います。

--地域の魅力を感じられるような、イチオシのツアーを教えてください。

牛尾さん:春と秋に大きなカヌーで吉野川をのんびりツーリングするツアーです。貞光から美馬市の間くらいでやっているんですが、吉野川の大きさと水量は日本屈指。川幅がむちゃくちゃ広いですし、常に水がある。今、これだけの水量がある川は少ないんです。川から陸を眺めると、環境の変化もよくわかるし、川がある田舎の暮らしっていいなと思うんです。僕自身、自然保護に積極的に関わっているわけではないんですが、そうした活動をしている人の考えは伝えるようにしています。年間を通してガイドしていると、一回の台風で川の状況がまったく変わってしまったり、砂が堆積して水深が浅くなってしまったり、リピーターの人も変化に気づくので、その説明は必ずするようにします。
これだけ恵まれたいいフィールドがあるので、将来的にはフリーランス同士でつながって、もっと多彩な体験を提案できる仲間を増やしたいと思っています。