移住者インタビュー

Interview

Uターン30代地域おこし協力隊海陽町

ふるさとに新鮮な感動がありました

島田佳香さん

出身地:海陽町

移住年:2015年

現住所:海陽町

職業:地域おこし協力隊

取材年月:2016年1月

同窓会に出席し、ふるさとならではの“言葉のいらない人間関係”の心地よさに触れ、Uターンを決意。海陽町立博物館に勤務し、海部刀や大里出土銭、大里古墳、八阪神社、関船などのPRに携わる中で、出会った人や風景に新鮮な魅力を感じるという島田さん。慣れ親しんだ場所だからこそ、その感動はより印象的なものとなっているようです。

「時々帰省する」から「ふるさとで暮らす」にした理由

--徳島に戻って来られるまでは、どんなお仕事をされていましたか?

島田さん:編集プロダクションで医学書などの書籍を作る編集、校正、ライターの仕事をしていました。もともと文章を書くのが好きだったので、約5年勤めた後会社を辞めて、脚本などを書いて生活できればと、映画製作の専門学校に入りました。在学中は脚本兼監督として、短編映画を何本か撮り、卒業制作作品の監督にも選出されました。カメラを扱うというよりは脚本に力を注ぎ、卒業後は自主制作を行いながら、編集や校正といった経験をいかし、派遣の仕事で生計を立てていました。

--Uターンしようと思ったきっかけは?

島田さん:宍喰(ししくい)に『ひこうせん』という喫茶店があって、帰る度、そこへ行くんです。オーナーの谷さんはいつも明るく話しかけてくれるんですが、お正月に帰省した時、「地域おこし協力隊を海陽町でも募集しているよ」と教えてくれて。それを聞いて初めて地元に目が向いて、東京で一人でやっていくよりも…と考え始めました。

--東京での暮らしを考え直すタイミングでもあったということでしょうか?

島田さん:そうですね。生活のためにやっている派遣の仕事が社会とのつながりになっていて、偏った関わりの中でどんどん社会が見えなくなっていくような不安はありました。『ひこうせん』で話を聞いた後、ちょうど同窓会があって。中学校を卒業して以来会ってない人も多かったんですが、会ってみると、あっという間にみんな童心に戻って、むちゃくちゃ楽しかったんです。派遣の仕事はプロジェクトが終わる度、人間関係を新しく築いていかないといけないのが辛かったんですが、「地元に帰ったら言葉のいらない人たちがいるじゃないか!」ということに気付いて、徳島に戻り、教えてもらった地域おこし協力隊に応募してみようと思いました。

意外と知らない地域の歴史・文化に苦戦

--海陽町では様々な業務の地域おこし協力隊募集を募集していたと思うんですが、その中でも海陽町立博物館での仕事を希望されたのはなぜでしょうか?

島田さん:学芸員の資格を持っていたので、少しは役に立つかと思って。でも、いざ仕事に就いてみると「資格がある」というだけでは全然ダメですね。すごく専門的ですし、地域の歴史や文化など、自分がいかに地元のことをしらなかったのかという現実にぶち当たって、今も苦戦しています。

--海部刀が多く展示されていますね。背の部分がノコギリのようになった刀もありますね。

島田さん:海部刀は今から約650年前、海部川一帯を治めていた海部氏によって作られたもので、“片切刃造り”という片側だけに刃がついたものや、江戸時代に阿波の蜂須賀家が大名間の贈答品として重要視した海部拵(ごしらえ)、それから刀身の棟(むね)の部分がノコギリ刃になっているものがあることで有名です。日本刀は美術刀剣として語られることが多いんですが、海部刀は実用刀として特に戦国時代に量産・普及し、ノコギリ刃海部刀は船で使う縄や木などを切ったりするときに使われていたものと考えられています。最近、日本刀をテーマにしたゲームが流行っていて、これまでにない日本刀ブームがきています。今まで日本刀の価値や魅力って、一部の知識のある人やマニアの人たちにしかわかりにくかったと思うのですが、これを追い風に初めて海部刀を見る人にもわかりやすく、興味を持ってもらえるよう、展示も工夫しています。海部刀は地方の刀で、郷土刀として美術刀剣の世界でも個性豊かな存在といえます。海部刀をアピールすること、他地域の方にも知っていただくことが、海陽町の地域おこしにもつながっていけばいいなと思っています。

--どうやって勉強しているんですか?

島田さん:地元にずっと住んでいらっしゃる人が詳しいので、そういう人にお話を聞きに行ったりして、知識を深めるようにしています。町史を読むのもいいですが、話を聞く方が勉強になりますね。

“地域おこし協力隊”の利点は、地域と繋がりやすいこと

--海陽町での暮らしはいかがですか?

島田さん:魚や野菜も新鮮。柚子の酢を使ったお寿司など、ここでしか食べられないもの、ここでしか見えない景色に心が和みます。子供の頃から見慣れた風景も、自分から帰ってきて見るとまた違った感動がありますし、地域おこし協力隊の研修で町内の限界集落やすごい山奥へ行かせていただいて、「こんなところがあったんだ!」という発見もいっぱいありました。この仕事をしていなければ出会えないような人や、海陽町のために「何かしたい」と思っている人たちと出会えたことも、地域おこし協力隊として戻って来れてよかったと思っています。

--こちらに戻ってから作品は作られましたか?

島田さん:地元の劇団『レインボー』で脚本を書かせていただき、昨年の秋に上演していただきました。

--どんなお話ですか?

島田さん:『KAIYO★タイムトリップ』というタイトルで、反抗期の中学生と父親の話です。物語の冒頭、言うことを聞かない子供をいきなり父親が平手打ちするシーンがあるんですが、海陽町は漁師町ということもあって、以前はすぐ怒鳴る、すぐ殴るという頑固親父タイプが多かったんです。そんな昔ながらの親子関係を軸に、伝説の山姥(おんば)や海部刀の名工・氏吉など海陽町にちなんだ題材も盛り込みました。最後、学芸員役で私もちょっと出演させていただき、いい思い出になりました。

--すごい活躍ですね!海陽町に関心のある方が町の魅力を気軽に体験できる機会や、おすすめスポットはありますか?

島田さん:海陽自然博物館『マリンジャム』のシーカヤック体験がおすすめです。小学校の頃、夏は宍喰の大手海岸や竹ケ島など地元の海で毎日のように泳いでいました。マリンスポーツは、大人になってから初めてしたのですが、シーカヤックの上で見る光景はまた格別。初心者の方でも簡単に体験できますので、ぜひチャレンジしてもらいたいです。