移住者インタビュー

Interview

Iターン40代サービス・飲食地域おこし協力隊美波町

美波町は移住しやすい町。郷土愛も芽生えています。

園木裕介さん

出身地:岡山県

移住年:2014年

現住所:美波町

職業:地域おこし協力隊

取材年月:2015年11月

子どもが生まれたことをきっかけに移住を考え始め、「釣りが好き」という理由で選んだ海辺の町・美波町。縁もゆかりもない町で、NPO『日和佐まちおこし隊』の一員として地域活動を行ううち、周囲の地元愛にあてられ、定住を決意。桜町商店街の復興を夢見て、今春、カフェをオープンします。

子どもが生まれて、「いつか」が「今」になりました。

--なぜ、美波町への移住を決められたんでしょうか?

園木さん:美波町に来るまでは神戸で働いていたのですが、僕も嫁も田舎の出身なので、「いつかは田舎で暮らしたいね」と前々から話はしていたんです。いざ動き始めたのは、子どもができたことがきっかけ。釣り好きなんで、どうせなら海の近くがいいと思って、物件や仕事を探していたら、インターネットで「地域おこし協力隊」という制度を知り、美波町が募集しているのを見つけたんです。5つの団体がそれぞれ1名、募集していたんですが、その中でもNPO法人『日和佐まちおこし隊』の募集内容に興味があって。親戚や友達がいるわけでもなく、徳島に縁もゆかりもなかったんですが、面接のとき初めて美波町へ来ました。

--随分思い切りましたね。

園木さん:来てみたらきれいなところだし、「いいんちゃう!」と(笑)
募集要項に地引網など体験型観光を中心にした町おこしの計画がいろいろ書かれていたんですが、特に興味を持ったのはフィッシャーマンズワーフ。釣った魚をその場で提供したり、釣り堀もあって、そこで釣りを教えながら運営に関われたらいいな~と。まだ構想の段階なんですが、そこに一番惹かれました。今は高齢者への配食サービスやアドプト、イベントや祭りの運営・サポートが主な仕事。これらは会長の中東さんの考えによるもので、共感することが多く、比較的自由に活動させてもらっているので、決断してよかったと思っています。

美波町は、人間同士の心地よい距離感が保たれた町

--見ず知らずの土地で困ったことはありませんでしたか?

園木さん:よく聞かれるんですが、特にないんですよ。寝ててムカデに噛まれたことくらい(笑)ここでは、困る前に誰かが声をかけてくれるんです。薬王寺のお膝元としてお接待の文化が根付いているせいなのか、南国気質のせいなのかはわからないのですが、田舎特有の排他的な雰囲気がなく、かといって馴れ馴れしくもない。人間同士の距離感が程よく、移住しやすい環境だと思いますね。だから自然と「町のためにできることがあれば、僕もやらせてもらおう」という気分になり、町のイベントや祭りには積極的に関わっています。

--もともと祭りやイベントが好きな方だったんですか?

園木さん:そういうタイプじゃなかったんですよ。高校まで岡山で暮らしていて、その後、東京へ行ったり、関西で働いたりと各地を転々としていたこともあって、郷土愛と呼べるものがない。美波町に来るまで地域の祭りにも出たことがないですから。だけど、ここの人は皆、地元愛が強い。それにあてられたのかもしれないんですが、行事を手伝ったりするのも苦にならないんです。祭りだけじゃなく、草刈りとか、壁を塗ったり、障子を貼ったり、テレビで見たような田舎暮らしを体験していることが、なんだか楽しくて、一年があっという間に過ぎたように感じます。

桜町通りの復興を目指し、カフェを始めることにしました。

--地域おこし協力隊の任期満了を待たず、定住を決めたそうですね。

園木さん:1年で決断したのがよかったかどうかはわからないんですけどね(笑)。
もともと嫁が神戸でパティシエをしていて、共同経営でしたが自分の店もあり、それなりに繁盛していたんです。結婚して子どもができたことで店を辞めざるを得なくなってしまったので、できるだけ早く店を持たせてやりたいと思ってはいました。当初、地域おこし協力隊の任期が終わる3年後に始めようと考えていたんですが、周りからの後押しもあり、予定を早め、2016年の春からカフェを開業できるよう、古民家を改装しているところです。

--カフェですか、楽しみですね。

園木さん:お遍路さんや観光客は多いんですが、このあたり、ほとんど飲食店がないんですよ。今ある店は土日ともなると、順番待ちの列ができて、さばききれない状態。需要と供給のバランスが悪いんです。IT関連のサテライトオフィスも多く、視察などでもこれまで以上にいろんな人が美波町へ来るようになった。都会ならちょっとした打ち合わせは「食事でもしながら」、「お茶でも飲みながら」と喫茶店とかに行くでしょ? 美波町にはそういう場所がない。奥様達がおしゃべりするのも、誰かの家に行って話をしている。カフェなら競合しないし、きちんと集客できれば、商売は成り立つと判断したんです。

--薬王寺の門前町・桜町通りで店をしようと思った理由をお聞かせください。

園木さん:『日和佐まちおこし隊』の計画の中に「桜町通りを活性化させたい」というのがあって。ここ、桜町通りは商店街なんですが、ほとんどが閉まったままになっています。道行く人に「今日は定休日ですか?」なんて聞かれたりもします。自分の店を開けようが閉めようが勝手なので、僕が口出しすることじゃないかもしれませんが、空き家のままにしておくのと、人が住んでいるのとでは町の雰囲気が違う。ここで商売を成功させれば、それがよび水になって、若い人がお店をできると思うんです。うちの真正面に飲食店を作ってくれてもいい。「桜町通りは商売が成り立つ」というエリアにしたいという夢をもって、ここでカフェをやりたいと思っています。地域の人はもちろん、美波町にふらりと立ち寄ってもらうきっかけとなるような店を作っていきたいと思いますので、オープンしたら、ぜひ来てくださいね。