移住者インタビュー

Interview

Iターン30代農林漁業上勝町

固定概念を外せば、きっと見えてくる。

百野大地さん

出身地:和歌山県

移住年:2013年

現住所:上勝町

職業:農業

取材年月:2016年2月

「葉っぱビジネス」で知られる上勝町の第3セクター「いろどり」でインターンを体験し、同町に移住した百野さん。その後も地域おこし協力隊として阿波晩茶の開発に携わるなど、地域活性化への取り組みを続けています。百野さんが感じる、上勝町の魅力とは?

インターンシップ生から地域おこし協力隊へ。

--上勝町に移住したきっかけを教えてください。

百野さん:僕の母親が、葉っぱビジネスで有名な「株式会社いろどり」の農業研修を受けに上勝町に来ていたんです。僕は大阪の会社で働いていたのですが、母の様子を伺うために同社が行っていたインターンシップに申し込んだのが、このまちに足を踏み入れたきっかけです。とにかく「すごい田舎だなぁ」というのが第一印象でしたね。

--それからずっと上勝町に?

百野さん:いえ、1カ月の研修を終えた後は、大阪に戻って働いていました。ただ、インターンシップでいろいろと学ばせてもらった時に「地域活性化に携わるのも面白そうだな」と感じていて。2013年に仕事を退職し、地域おこし協力隊としてこちらに再びやってきたんです。協力隊では、地域に伝わる発酵茶である「阿波晩茶」を使った食品の開発などに関わらせていただきました。同時に「いろどり」の社員の方から「彩(ツマモノ)における新規就農のモデルケースとして活動してみないか」と誘われたので、農作業なども平行して進めていました。とにかく忙しい日々でしたね。

しっかり働きながら、子育て中です。

--「彩」と「阿波晩茶」という、まさに上勝町を代表する特産品の生産に関わられてきたわけですね。

百野さん:地元の農家さんの所でノウハウを学んだり、母の収穫作業を手伝ったりしながら、ここまでやってきました。今年の夏に地域おこし協力隊としての任期を終えるのですが、彩と阿波晩茶の両方で就農したいと考えています。彩は年末が忙しくなるのに比べ、阿波晩茶の収穫時期は夏。一年を通して効率的に農業を行えると思います。

--大阪とはかなり環境が違うと思いますが、こちらに来て驚かれたことはありますか?

百野さん:とにかく高齢者が元気だということですね。今までは60歳を超えたら高齢者施設と家を行き来し、特に外出もせずのんびり暮らすというイメージでした。でも、こっちの高齢者は、70歳を超えてもパワフルだし、景観整備のための間伐作業でも若者より元気に動くんです。医療費がほとんど掛からない町として有名な理由が分かったような気がします。

--なぜ、それほどまでに高齢者が元気になれるのでしょう?

百野さん:やはり、彩の葉っぱビジネスなどで、働いたり儲けたりする喜びを感じながら生活しているからではないでしょうか。でも、最近ではそれを「すごいこと」と思わなくなりました。高齢者は家でじっとしているなんて、自分の固定概念に過ぎないことが分かったからです。「これが普通なんだ」と思って生活をしていると、自分までいきいきと暮らせるような気がします。

コンビニはないけれど、全然大丈夫。

--今まで都会で働いてこられた百野さんにとって、農業の魅力って何ですか?

百野さん:やったことが全部返ってくるところかな。汗を流した分だけ作物も応えてくれるんです。僕にとって畑に行くのは、仕事でもあり、息抜きでもある。誰かにやらされているわけではないので、ストレスもまったく感じません。

--休日などは、どのように過ごされているのでしょう?

百野さん:町内にはおしゃれなカフェやイタリア料理店などもあるので、たまに通ってリラックスしています。週末だけオープンするバーもあって、お酒を飲む人は家まで送迎もしてくれるので本当に便利なんです。あと、町にコンビニはないけれど、集落ごとに商店があるので生活に必要なものは揃いますしね。店主と仲良くなれば、タバコの銘柄などの品揃えも増えていったり(笑)。

--移住を考えている方々にメッセージをお願いします。

百野さん:このまちで人とつながりながら暮らしていると「交通費や食費、居住費にいくら掛かる」といった不安を感じなくなっていくんです。それはきっと「お互いに助け合う」という思いが自然と受け継がれている地域だからじゃないかな。上勝町のことが少しでも気になる方は、とりあえずここに来て、自分の目でいろんなことを確かめてみてください。固定概念を取り外せば、きっといろんな魅力が見えてくると思いますよ。