移住者インタビュー

Interview

Uターン20代農林漁業藍住町

いつの日か、このまちの農業に恩返しを。

佐野健志さん

出身地:藍住町

移住年:2012年

現住所:藍住町

職業:農業

取材年月:2016年2月

愛知県の大学院を卒業後、生まれ育った藍住町にUターンを果たした佐野さん。祖父が行っていた農業を再開し、町の特産品として有名な春ニンジンなどを栽培しています。「周りで支えてくれる方々がいるから、ここまでやってこられた」と笑顔で話す彼に、故郷や農業に対する思いを伺いました。

ニンジンたちの表情を見つめながら。

--学生時代の6年間を愛知県名古屋市で過ごされたそうですが、徳島にUターンしようと思った理由は?

佐野さん:そもそも向こうの大学を選んだのは、県内の大学に農学部が無かったことと、一度は都会で一人暮らしがしてみたかったからなんです。就職活動では農業関係の企業から内定をいただいていたのですが、そこで再度、自分の人生について考えました。日本全体の視点から農業に関わるか、自分自身がやっているミクロな所から農業に関わるか、どちらが面白いものが見えるんだろうって。その結果、自分でできる所までやってみたいなと思ったんです。

--藍住町は春ニンジンの産地として有名ですが、佐野さんが手掛けている春ニンジンは、どのような品種ですか?

佐野さん:病気に強い、形がきれいにできる、収穫量が多いなど、それぞれの特徴を持った5種類ほどの品種を、畑によって使い分けています。一つの品種に絞って作られている生産者の方もいらっしゃいますが、僕の場合、その辺にあまりこだわりはないんです。きれいに育ててあげれば、どの品種でもおいしいものができるし、その土地に合ったものを植えながら、自分の力で品種の可能性を引き出せればいいなって。ニンジンたちが「この育て方でいいよ」っていう表情になるよう、一生懸命に育てています。

同業者との交流から未来が見えた。

--農業を始められて4年目ということですが、立ち上げの際にはどのような支援を受けられたのでしょうか。

佐野さん:金銭的な面で言えば、国や県、町などからいろんな助成金をいただきました。農業の新規就労支援や新規就農者のモデル構築事業などによって、農業に必要な環境を整えることができましたし、最初の数年間は所得が少ないため、所得助成なども申し込みました。町にも海外視察の交通費を支援していただくなど、自分が受けられるものは積極的に利用させていただきましたね。

--そういった情報は、どちらで収集されるのですか?

佐野さん:地元には、農業青年クラブや新作物研修会などの団体があり、その仲間に加えてもらったことが本当に大きかったと思います。いろんな先輩たちから技術や情報についてアドバイスしていただけますし、農業関係者の人脈を広げることができましたから。今では県の農業青年クラブの副会長を務めさせていただいていますが、そこでも多くの方と情報交換ができるので、とても刺激になります。

--本当に濃密な4年間を過ごされたのですね。春ニンジン以外の作物も作られているのですか?

佐野さん:地元の新作物研究会では、春ニンジン以外の作物についても今後の可能性を話し合っています。たとえば、春ニンジンは種まきから収穫まで約3カ月を要するのですが、その間に他の作物を収穫できれば、収入を安定させることができますから。僕の畑でも、町の新たな特産品として売り出し中の「愛住ねぎ」を栽培している所です。とても甘くて柔らかいのが特徴で、焼いても煮ても本当においしいですよ。

農業の可能性を、さらに広げたい。

--移住者の中には、藍住町で農業をしながら暮らしたいという希望があるかもしれません。それを実現するためには、どのような行動を起こせば良いでしょうか。

佐野さん:新作物研修会のメンバーの中には、インターン生の受け入れを行っている方もいらっしゃいます。まずは、そういった方のもとで経験を積み、次のステップについて考えてみるのも一つの方法ではないでしょうか。実際に県外からインターンシップを受けに来ている方もいるし、農家の後継者として仕事を任されている方もいます。将来的には、誰かに畑を借りて農業をするなどの選択肢もあると思いますよ。

--佐野さんが考える、藍住町の魅力って何でしょうか?

佐野さん:都会で暮らしてみて改めて思ったのは、やっぱり自然が豊かで、食べ物がおいしいということです。畑で採れたての野菜が産直市やスーパに並びますし、車で少し走れば大きなショッピングモールもある。なかでも僕が好きなのは、吉野川の風景。川をオレンジ色に染める夕焼けは、いつ見ても心が癒されますね。

--今後の抱負についてお聞かせください。

佐野さん:農業者としてはまだ半人前なので、まずは一人前になることが最優先です。もしそこまで行けたとしたら、今まで面倒見てくださった皆さんへの恩返しも含めて、藍住町の農産物の素晴らしさを県内外にもっとPRしていきたい。生産者や卸売りの方々との連携を深めながら、いいものがあれば取り入れ、より多彩な農産物を作れるようになればいいですね。もし、この場所で農業を始めたいという方がいらっしゃれば、仲間と共に全力でサポートしたいと思います。