移住者インタビュー

Interview

Iターン20代農林漁業石井町

農薬と肥料を使わずにつくる野菜の美味しさ。

田中千尋さん

出身地:京都府

移住年:2013年

現住所:石井町

職業:会社員

取材年月:2016年3月

石井町で農薬と肥料を使わずに多様な野菜をつくり、全国の家庭へ出荷している若葉農園。ここで正社員として働く田中千尋さんは、大学で物理学を学んでいたという経歴の持ち主。農業を志したきっかけからお聞きしました。

「農業は面白い」と感じた徳島で就農する。

--京都府出身で大学では物理学を専攻。徳島にも農業にも縁がなさそうですが…。

田中さん:最初のきっかけは大学3年生のときに見つけた徳島県の農業インターンシップのチラシでした。不思議と気になって申し込んだところ、配属されたのは那賀町の花農家。1週間ほどそこで働きながらお世話になったんですが、初めて「農業って面白いな」と思ったんです。

--いきなりインターンシップとはすごいですね。農業経験は初めてだったのですか。

田中さん:実家の裏に小さな畑があるんです。家族で食べる野菜を栽培する程度の広さですが、両親がじゃがいもやサツマイモを育てていたので、日々の世話を手伝ったり、秋になって収穫のときには芋掘りをしたり…。当時は遊びの一つのような感覚で楽しんでいただけと思いますが、今から振り返ってみると、それが農業に対する原体験だったといえるのかもしれません。

--それにしても、徳島へ移住して農業を仕事にするとは思いきった決心でしたね。

田中さん:就職活動の時期を迎えてからも、特にやりたい仕事も見つからず、何となく普通の会社で働く気が起きなかったんです。そんなとき、農業インターンシップで仲介してくれた徳島県農業会議の方から連絡があって。電話で話しているうちに「仕事で悩んでいるんだったら、徳島で農業をやってみないか?」と声をかけていただいたんです。いろいろ考えた末、農業にチャレンジすることにして、小松島市と神山町、そして、ここ石井町の農家を紹介してもらいました。実際に経営者の方とお会いしてお話を伺い、最終的に決めたのが若葉農園なんです。

農薬と肥料を使わない自然農法に惹かれて。

--徳島の就職先・移住先として田中さんが若葉農園を選んだ理由を教えてください。

田中さん:最大の理由は無農薬・無肥料栽培の「秀明自然農法」を採用していたことですね。どうせ農業に携わるのであれば、より安全で美味しい野菜をつくりたいと思ったんです。畑に農薬と肥料を入れないというスタイルもすごいと感じましたし、自分のところで種をつくる自家採種を行っていることにも惹かれました。季節に応じた約40種類近くの野菜を露地とハウスで育てているため、ほぼ毎日収穫があるのも特長の一つです。毎月約1,000箱の野菜セットを通信販売の形で出荷し、全国各地に点在する購入会員の方々のもとへお届けしています。

--「農薬を使わない」だけでなく「肥料を使わない」点は本当にすごいですね。

田中さん:そうなんです。肥料を与えないと作物は育たないんじゃないかと思っていたんですが、その考えは完全に覆されました(笑)。若葉農園は社長が20年もの間に培ったスタイルを研修生に包み隠さず教えてくれる点も魅力です。ここでお世話になって3年目になりますが、働きながらいろいろなことを教わっている段階ですね。一部のベテランスタッフ以外の研修生は1年から2年でここを卒業して就農するため、いつの間にか新人を指導するような役割になりましたが、自然が相手の仕事でもありますし、まだまだわからないことも少なくありません。

--3年目ということですが、ここ石井町の若葉農園の寮で暮らす毎日はいかがですか。

田中さん:肉体労働なので大変なことも多いですが、野菜づくりに関しては充実しています。若葉農園は大きく分けて夏を中心とした時間割、冬を中心とした時間割、二つの動き方があり、どちらにもやっと慣れてきたような気がします。それでも、種蒔きのような重要な仕事やトラクターなどの機械類の操作方法など、覚えるべきことは山のようにありますから、日々勉強です。すべてを身につけて一人前になるには、一つひとつの作業をしっかり積み重ね、ゆっくりと、でも確実にステップアップしていくしかない。あせらず、じっくりやっていくつもりです。

 

太陽の動きに合わせて日々を送る暮らし。

--ここで美味しい野菜づくりを行っているわけですが、石井町の印象はどうでしょう。

田中さん:私が生まれ育った京都は盆地なので「夏は暑く、冬は寒い」という土地柄です。石井町に移住してきて感じたのは温暖で過ごしやすいこと。陽当たりが良好で風通しもいい。農業には特に適している土地なんじゃないかと感じました。決して都会ではありませんが、学校や病院など、暮らしに必要なものは揃っているため、ファミリー層には住みやすい町です。

--農業のやりがい、これから目指していきたいことについて教えてください。

田中さん:安全で味のいい野菜を必要としている方は増えていますし、これからの時代はますます理解が広がっていくのではと考えています。今年の1月から若葉農園の野菜セットにアンケート用紙を入れるようにしたんですが、購入会員の方々からの「美味しい!」という感想が何よりも励みになります。太陽の動きに合わせて身体を動かす農業は、身体的に辛いこともありますが、自然とともに毎日を送る生活は贅沢なもの。ずっと都会暮らしよりも恵まれていると思います。今後も石井町の若葉農園の一員として、質の高い野菜をつくっていきたいですね。