移住者インタビュー

Interview

Iターン30代編集・クリエイター農林漁業牟岐町

食べて作って二度おいしい。県南は魚の宝庫です。

河野亮平さん

出身地:愛媛県

移住年:2010年

現住所:牟岐町

職業:漁協職員、魚の骨アーティスト

スキューバダイビングにはまり、移住を決意した河野さん。海陽町の鞆浦漁協に勤務しながら、サンゴ保全のためにオニヒトデの駆除を行う『もぐりん』の活動や、魚の骨格標本による「骨アート」にも力を注ぎ、海と身近に接する町での暮らしを満喫しています。

スキューバダイビングが移住のきっかけです。

河野さん:仕事を辞めて、4ヵ月くらいかけて車で日本一周をしたんです。日本一周をしているときに、無意識に海ばっかり見に行ってたんですよ。沖縄から北海道まで、どこへ行ってもスキューバダイビングをしている人たちがいて、「ダイビングってそんなに面白いのかな?」と興味を持って。家帰ってすぐにダイビングショップを調べて、「徳島の海はきれいだな~、説明だけでも聞いてみようかな~」と思って海陽町のスキューバダイビングショップ『海底少年』へ行ったんです。それが11月。やってみたら完全にはまって、『海底少年』に寝泊まりしながら、ずっとダイビングをしてました。

--スキューバダイビングには免許がいるんですよね?

河野さん:そうです。『海底少年』では国際ライセンスも取得できるので、そこでインストラクターの資格も取得して、このまま「ずっと海のそばに住んでいたいな」って思っていたときに、海陽町の鞆浦漁協の職員募集の話を聞いて、「やってみようか」と。そこから家を借りて、本格的に移住しました。

--牟岐町で家を借りたんですか?

河野さん:最初は海陽町の鞆浦に住んでいたんですが、結婚したこともあって牟岐町に引っ越しました。牟岐にはサンゴの保全を目的にオニヒトデの駆除をする『もぐりん』という団体があって、僕も『もぐりん』の活動に参加しているんですが、ちょうどその『もぐりん』の方からの紹介というのもあって牟岐の家に決めました。

--『もぐりん』て、かわいい名前ですね。

河野さん:牟岐大島と呼ばれる周囲約8 kmの無人島があって、釣りやダイビングの名所としても有名なすごくきれいな島があるんですが、そのサンゴ群がオニヒトデに食べられて死んでいってるんです。スキューバダイビングしている人じゃないとできない活動なので、僕も役に立てればと思ってやってます。

--牟岐町へ引っ越して来られていかがですか?海陽町との違いはありますか?

河野さん:それはあまり感じないですね。今、住んでいるところは国道沿いで、周囲は商店がほとんど。だからあまり近所付き合いもないんですが、鞆浦にいたころは漁師さんたちから夜な夜な電話かかってきて、「飲みに来い」ってよく誘われました(笑)。田舎町なんで、移住した最初の半年くらいはあまり話しかけられることもないし、僕が通りすぎた後、「今の誰?」みたいな感じで様子を見ていた感じだったんですが、僕の素性がわかって、打ち解けた後は一気に受け入れてくれたように思います。

--生活のうえで不便を感じることはありますか?もっとこんなものはあれば…と思うこととか。

河野さん:特にコレといったものはないですね。移住してきたい人は田舎に住みたくて来るわけだから、都会的なものを作ったって仕方ないし、魅力にはならないなと思います。たまにマクドナルドが欲しい時はありますが(笑)今、不便と思うことはないですね。

冬の方が水はきれい。熱帯魚は年中います。

--話は戻りますが、スキューバダイビングの面白さってどんなところでしょうか?やっぱり熱帯魚ですか?

河野さん: 熱帯魚は年中います。徳島の県南部と高知にかけて、クマノミもいますし、すぐ近くのそこらじゅうでサンゴも見れます。海の中って誰でも見れるわけじゃないですし、海中でふわふわ浮いてる感じとか、そんなのも楽しいですよ。

--年中熱帯魚がいるってことは、海の中は冬でもあったかいんですか?

河野さん:寒いです(笑)でも水に濡れないドライスーツってあるんですよ。フツーの服を着たまま、そのスーツ着てファスナー締めたら水が入って来ない。だから中さえしっかり防寒してたら結構、いけます。冬の方が水がきれいなんで、冬場に始めてよかったです。

--スキューバダイビングの仕事ではなく、漁協を仕事として選ばれたわけですが…。

河野さん:仕事内容とか全然知らずに入ったんですが、これが意外と楽しくて。以前は製造業で働いて、その時は図面見て、削って、くっつけて…という作業の連続で、だんだん物足りなさを感じていましたが、漁協は毎日違う魚があがってくるし、普通に生活していたら見られないようなサメやクジラ、ウミガメなんかに毎日触れられて(笑)面白いです。

ブログに載せたら面白いと思って始めた「魚の骨アート」

--魚の中には売り物にならず、捨てるものも多いそうですね。

河野さん:おいしいけど1匹じゃ売れない、一般的に知られてないなど、捨ててしまう魚は結構な量あるんですよ。ずっともったいないと思っていて、その時ちょうど鞆浦漁協でブログを書き始めたので、「魚の骨を載せたら面白いかな」と、やってみたら結構反響があって。

--現在は『モラスコむぎ』に河野さんの作品がたくさん展示されています。骨だけでなく、魚の写真も付いているのですごくわかりやすいですね。しかもこれだけ数が揃うとインパクトがあります。

河野さん:最初は漁協に飾っていたんですが、子供たちがたくさん見に来てくれて。魚って食べ物とか、住んでるとことかで形状と歯のカタチとか、全部違うんですよ。今、展示しているのは100個くらいですが、まだ段ボールに200個くらい入っています。

--それだけ作れば、もうほとんど作り尽くしたのでは?

河野さん:鞆浦漁協に揚がる魚だけでもまだまだあります。最近忙しいんで作ってないんですが、体はおいしくいただき、頭は作って楽しむために冷凍保存しています。

--一番作りやすい魚はどれですか?

河野さん:フグです。フグは頭の骨が頑丈で簡単なんですよ。魚を食べる時、僕だって骨は邪魔だと思いますけど、面倒だからといって切り身や刺身にしか触れてないでいると、子供たちが「魚って骨があるの?」っていう時代がくるかもしれない。モリみたいな歯で獲物を捕らえて食べる魚、石臼みたいな平らな顎ですりつぶして食べる魚など、いろんな魚の骨格標本を見てもらうことで、魚たちの海での暮らしを感じてもらえるんじゃないかと思っています。いつもとは違う視点で魚を見ることで、魚に興味を持ってもらえたら嬉しいですね。