北野雅史さん・由希子さん
出身地:徳島県(石井町・小松島市)
移住年:2006年現住所:石井町
職業:会社経営
取材年月:2015年10月
海外や関東地方で長く暮らした後、故郷である石井町へUターン移住した北野さん夫妻。永住権を取ったニュージーランドを離れて石井町へ住むことを選んだ理由、およそ20年ぶりに戻った町での「懐かしくも新しい暮らし」について聞いてみました。
いずれは「Uターン移住」を考えていました。
--石井町へUターン移住されるまでは、どちらで暮らしてこられたのでしょう。
雅史さん:今から振り返ってみると、社会人になってからはいろいろな土地を転々とする生活でした。大学を卒業して最初に勤めた企業では結婚するまで転勤族でしたし、そこを辞めてからはニュージーランド、IT系の会社を起業してからは神奈川県の横浜市で暮らしてきました。生まれ育った石井町に戻ってきたのは2006年のことになります。
由希子さん:いつも私は驚かされてばかりなんです。結婚してすぐに「ニュージーランドへ移住する」と宣言されたときも本当にびっくりしたんですよ。「石井町へ戻る」と聞いたときも、やっと横浜での暮らしに慣れたところだったのに(笑)。同じ徳島県内でも私の実家がある小松島市とは違う土地ですから、個人的にはUターンではなく「石井町へ移住」という感覚でした。
雅史さん:妻には突然の出来事かもしれませんが、僕にとっては自然な流れなんですよ(笑)。20代は「何でも挑戦する」、30代は「可能性を探る」、40代は「仕事を広げる」、そして、50代は「生活を安定させる」という10年周期の将来設計がありましたから。子どもたちを自然豊かな環境で育てたいという気持ちもありましたし、いずれは実家へ戻ろうと考えていました。
移住前に心配だったのは仕事や育児の面です。
--石井町へ移住する前の段階で心配だった点はありましたか。
雅史さん:業務のIT化とノウハウを提供する仕事をしているため、心配だったのはインターネット環境と飛行機の便数です。北海道から沖縄まで広がる顧客との関係に支障をきたすようであれば、故郷へのUターンは時期尚早かなと考えていました。移住後の今もどんどん便利になっていますし、都会から離れていても普通に仕事ができる時代の訪れを実感しています。
由希子さん:私が気になったのは子どもの教育に関する情報や環境。それから、地域特有の人間関係でしょうか。どれも問題はありませんでしたが、何といっても実際に生活してみなければ見えてこない部分ばかりですから、自分が順応できるかどうかは少し不安がありました。
“適度な田舎”の持つ魅力を感じてもらえれば。
--Uターンして約10年、実際に住んでみた石井町の印象を教えてください。
雅史さん:約20年ぶりに戻った故郷は、驚くほど記憶にある景色と印象が変わらないんですよ。山も川もありますし、うるさいほど蛙の声がする田んぼも遠くまで広がっています。農作物の「旬の味」も楽しめるし、周囲の人たちも穏やかです。落ち着いて暮らしやすい反面、若者には刺激の足りない環境かもしれません。とはいえ、徳島県の中でも“適度に田舎”なので、交通インフラも整っている地域の一つですから、どこへ行くにも便利なのは嬉しいですね。
由希子さん:海外や都会と比べると、良い意味でも悪い意味でも人間関係の距離感が近い町ではあります。移住してくると事情も詮索されますし、最初は少しストレスも感じました。でも「郷に入れば郷に従え」という言葉どおり「そういうものなんだ」と受け入れてしまえば、まったく気にならなくなると思います(笑)。それが地域の自然体でもあるんですね。
何でも取り組むことができる生活拠点として。
--北野さんご夫妻が考える石井町の魅力はどんなところですか。
雅史さん:さきほども言いましたが、やっぱり最大の魅力は“適度な田舎”であること。徳島の中心部へも近く、県内各地の山や川や海へ出るにも便利な立地ですから、さまざまな仕事と遊びを両立する拠点にはぴったりです。都会から地方への移住を考えている方は、石井町のバランスの良さに着目してほしいですね。何でも取り組むことができる場所なんですよ。
由希子さん:ボランティアに熱心な方も多い地域ですし、高齢者と子どもたちとの触れ合いも多く、さまざまな世代の交流がある点は嬉しいところ。私も英語や食育の指導、読み聞かせなど、地域の活動には積極的に参加するようにしています。食べ物も美味しいですし、子育て支援や見守りも充実しているので、若いご夫婦でも安心して暮らせる環境です。石井町の人って本当に親切なんですよ。移住者にとって心強い助けになるのではないでしょうか。
最後に移住を考えている方へのメッセージをお願いします。
雅史さん:ニュージーランドへ移住したときに感じたのは、自然に移住者を受け入れる温かな雰囲気でした。都会でも田舎でもない石井町にも同じような懐の深さがあると感じています。外から来る人が増えれば、もっと面白いことが生まれる可能性もありますよね。本気で移住を考える前に、一度は町に足を運んでみてほしいと思います。