移住者インタビュー

Interview

Iターン40代サービス・飲食起業徳島市

徳島のあたたかい人柄に触れ、起業を決意。接客を大切に、ほっとできる空間を目指して

川口千穂さん

出身地:鳥取県

移住年:2019年3月

現住所:徳島市

職業:株式会社la.monon代表取締役

 

取材年月:2023年6月

縁あって徳島に移住したものの、コロナ禍に突入。閉塞感漂う中、子育てしながら起業に踏み切った川口さん。どこへも行けず、ストレスを抱える親子がほっとできる場所を、何か楽しい話題を・・・という一心で始めたお店は、今や人気店に成長しました。当時の思いを振り返りながら、徳島での暮らしについて伺いました。

―――徳島に移住されたのが2019年。お店を始めたのが2021年11月と、コロナ禍真っ只中ですが、最初から開業される予定だったんですか?

いえ、まったく!周りも「何を考えているの!?」という感じでした。

―――思い切った決断ですね。あえてコロナ禍に起業された理由を教えてください。

コロナ禍だからこそ、チャレンジする価値がある、チャンスだと思いました。

当時は「絶対県外に出ちゃいけない」「家にいなきゃいけない」と、行く場所も制限されて、みんなストレスが溜まりに溜まっていた時期。特にお子さんがいらっしゃるご家庭はもう爆発寸前・・・というところも多く、保育園や小学校が休みになって、ちっちゃい子どもを抱えたお母さんたちは、仕事も休まないといけない、そうなるとお金のことも不安…と、とにかくいろんなストレスを抱えて、みんな切羽詰まって、本当に辛い思いをしていました。

「私がお店を開けなかったら、楽しいがことがなくなってしまう。やるなら今だ!」と思いました。

―――切実ですね。

人は楽しいことがないと生きていけない、どこかで息抜きをしないとやっていられないと思うんです。「みんながどうにか息抜きできる場を作りたい」という思いだけで、突っ走っていました。

↑モノンのキャラクターのくまさんたち。お店のあちこちに“かわいい”があふれています。

―――起業に向けてどこかで勉強されたんですか?

いえ、特に。ただ、両親が居酒屋を経営していて、子どもの頃から飲食業は身近でした。

徳島に来るまで生パスタのお店で7年間勤務し、店長もやっていたので「いつかお店を出したいな」とぼんやりと思っていましたが、経営の勉強をしたりとか、そういうのはないです。

―――子育てと起業の両立は結構、ハードだったのは?

そうですね。当時次女は4歳、三女0歳。長女は高校生だったので「転校したくない」と移住せず、鳥取の実家で暮らしていました。私の弟が両親と一緒に店をやっているのですが、「お姉も戻ってきて店を手伝ったら?」と言ってくれましたが、実家に戻ろうとは思いませんでした。

―――それはなぜですか?

徳島の方々のあたたかい人柄に触れたからですかね。

移住して1年間、ほとんど知り合いもいなくって、かなり気持ちが滅入ってしまった時期があって。そのときに「何しよんな?いつでも話しぃよ」って親身になってくださった方がいて。そういう心遣いが、気持ちを支え、守ってもらったように感じました。

徳島の人は人との距離は近いというか、奉仕の精神が強いというか、お店を始めてからもいろいろな方からサポートしてもらっています。わかめのシーズンになると「わかめいるで?」、サツマイモのシーズンなると「サツマイモいるで?」って持ってきてくれたり。誕生日でもこんなにたくさんもらったことがないというくらい、山ほど野菜をいただくこともあって。日常的なやりとりの端々に「誰かが喜ぶ姿を見るのが好きな人が多いんだな」と感じます。

―――そうした徳島の人たちとの繋がりが川口さんの原動力になっているんですね。

オープンしてからも予想以上にたくさんのお客さまが来てくださって、SNSでもたくさんメンションしてもらい、「パスタだけじゃなくて接客もすごくいいんだよ」とクチコミも広がり、「さすが噂通り!」と声をかけてくださる方もいて、徳島の方々に支えられている、本当にありがたいと感謝しています。

―――『la.monon』は、料理もさることながら、接客を重視した店づくりに力を入れているんですよね。

この店の目的は「お客様に寄り添った接客」が一番で、2番目が「美味しいパスタ食べていただく」こと。私自身、20歳くらいの頃からずっと接客を学んできて、料理もしますが自分自身を“料理人”だとは思っていないんです。

↑削りたてのチーズをかけてくれるサービスも。

―――接客に力を入れているのは、何か特別な体験があったんですか?

「これ」という出来事があったというわけではないんですけど、接客に重きを置くことによって、お客様との間に笑顔が生まれるんですよね。

私もいろんな飲食店へ行くのですが、「料理は美味しいのに接客が残念」という店は本当に多いんです。味は気にしても、接客を一番の考える店は少ないと感じます。

―――接客に関して、具体的にどういうことをされていますか?

お出迎えとお見送りは必ずしています。うちはちょっと狭いお店ですけど、基本的にスタッフは平日4人・土曜日祝日は6人構えています。お出迎えのときに必ず1人は出入口について、お待ちのお客様の対応ができるようにしています。それから満席の時は、お店の前で待っていただかなくてもいいように、お電話番号を伺って空き次第ご連絡させていただくような対応も行っています。

―――そうした姿勢をスタッフで共有しているわけですね。

そうですね。3ヵ月に1回、ミーティングを行い、どんどん改善をしていけるようにしています。その時にも言うんですが、私たちが目指すのは「丁寧な接客」ではなく、「お客様に寄り添う接客」でありたいと思っていて、それは「丁寧な接客を超える接客」だと思っています。

―――一段とハードルが上がりますが・・・。

お客様を見て、「こうしてほしいじゃないかな」とすぐ気づけるようなトレーニングは行っています。お客様とスタッフの距離感て、近すぎてもダメですけど離れすぎてもダメ。お客様の笑顔が生まれること、会話がうまれること、ワクワクしてもらえることを目標によりお客様に喜んでいただけるよう工夫しています。

―――そういう人材を育てるのって、大変ですよね。

スタッフはどの子も本当に良い子で、とっても大事に思っています。

いわゆる「接客の研修」といったようにシステマティックにやってしまうと、 “やらされてる感”が出てしまう。人と人との関わりの中で、喜びを感じながら自然と行動できるようになってほしいと思っています。

私自身が本当はホールに出て、ずっと接客していたいタイプなんです。厨房にいてもお客様から「ありがとう」「美味しかった」「また来るよ」という声がたくさん聞こえてくる。「ずっと来たかったんだ」とか。そういう声に力をもらっているので、スタッフもきっとやりがいを感じてくれてるんじゃないかなと思います。

―――徳島で暮らしてこられて、徳島のいいところを挙げるとしたら、どこでしょう?

徳島南部自動車道 吉野川サンライズ大橋から見る夕景です。すごく綺麗で大好きなんです。末広大橋から眉山に向けての景色とか、橋とか川の景色はめちゃくちゃいいですよね。祖谷のかずら橋や日和佐うみがめ博物館カレッタへも行きました。都会すぎず、田舎すぎず、住みやすい街だと思います。

あとは、すだち!徳島に来てはじめてすだちの美味しさに気づきました。すだちは食べたことがなかったんですけど、お味噌汁に入れたときに衝撃で!思わずSNSに投稿したぐらいすごく美味しかったです。

お店でも知り合いの野菜を売っているんですが、ネギも有名ですよね。友人がネギを作っていて(「まきちゃんの砂地野菜」)、美味しいものがたくさんだなあというのを感じています。

※2024年1月に徳島市川内町姉妹店『くまのこごはんや』をオープン。新店舗はソースが選べるドリアランチを中心にしたメニュー構成で、小さな子ども連れでも楽しんでもらえるよう、手あそびやマルシェも。『くまのこごはんや』(https://www.instagram.com/kumanokono_gohanya/)にもぜひお立ち寄りください!

店舗情報

生パスタのお店 la.monon(モノン)

住所/ 徳島市住吉 5-3-55(井内マンションA棟103)

電話/050-1308-1677

営業時間/11:00~17:00

定休日/日曜

駐車場/ 14台