移住者インタビュー

Interview

Iターン30代神山町

地域コミュニティの中で分かち合う暮らしをしていきたい

川野 歩美さん

出身地:千葉県四街道市
移住年:2016年
現住所:神山町
職業:神山くらしの宿 moja houseオーナー
年代 30代

千葉県四街道市という、都会からも近く、自然も残っている程よい田舎町で生まれ育った川野さん。東京で国際貨物の物流会社に勤め、バングラデシュで2年間暮らした後に、神山町へ移住しました。縁もゆかりもなかった神山町にどうやって巡りついたのか、「自分でも不思議なご縁を感じざるを得ません」という川野さんは現在、『神山くらしの宿 moja house』を運営しています。

川野さんが田舎暮らしに興味をもつきっかけは?

バングラデシュで青年海外協力隊として、貧困層の方々が暮らす地域で、生活向上のためのコミュニティを活性化するという活動をしていました。南アジア最貧国といわれるバングラデシュですが、実際に訪れると、人懐っこくおもてなし好きな人が多く、村での暮らしは、お金は無くても美味しいものを皆で分かち合ったり、出来ることをお互いに助け合うことが、あたりまえでした。豊かさとは何かを改めて考えさせられ、自分も帰国後は、日本の地域コミュニティの中で、そういった分かち合う暮らしをしていきたいと思いました。

神山町との出会いについて教えてください。

隊員仲間に「地域づくりに興味があるなら、徳島県に神山町という面白いまちがある」と教えてもらい、色々と調べてみると神山町で地域おこし協力隊を募集していました。そして、その協力隊のミッションが神山町の特産品である「すだち」や「梅」をPRするために、農家さんとシェフをつなげて、顔の見える関係をつくるというものでした。元々食べることが大好きで、まさに自分の関心のあることにピッタリだったこともあり、2016年に地域おこし協力隊として神山町に移り住みました。

神山町での暮らしはどうですか?

神山で暮らし始めてすぐ、バングラデシュの時に感じた豊かさ、例えば季節のお野菜をおすそ分けしあったり、「てまがえ」という助け合いの文化を感じ、「ここでなら私のやりたいことや、理想の暮らし方を探求できるのでは」と思いました。地域おこし協力隊のお仕事を通じて、多くの地域の皆さんとつながることができ、何かと気にかけてくださったり、応援していただくことも多くありました。また、神山には、地元の人も移り住んできた人も、この地でやりたいことに挑戦していたり、生き生きと楽しそうに暮らしている大人たちがたくさんいます。そういったみなさんから日々刺激を受け、ありのままの神山の暮らしを体験できたり、旅人と地域の人たちが交流できる場をつくりたい、とゲストハウスをはじめることを決意しました。

物件探しなどはどのようにされたんですか?

それまでは役場が用意してくれた町営住宅で暮らしていましたが、自分も住みながらゲストハウスが出来るような物件を探していたところ、神山町で移住交流支援をしているNPO法人グリーンバレーに、日当たりの良い山の上にある築150年の古民家を紹介していただきました。物件探しはご縁とタイミング、とよく聞きますが、私の場合もまさにそんな感じでした。元々比較的状態が良い物件でしたが、床下や天井がシロアリや湿気で朽ちていた部分もあり、補助金を使わせていただき、町の大工さんにお願いして改修をしました。また、ゲストハウスを作っていく段階から、様々な人とつながり、交流の場を作りたいと思い、床張りや漆喰の壁塗りは、ワークショップ形式でたくさんの方々のご協力を頂き完成しました。その時ワークショップに参加してくれた方の中では、思い入れのあるゲストハウスとして、足しげく通ってくださる方もいらっしゃいます。

2019年4月にオープンしてからこれまで、海外からのお遍路さんや、神山の自然を体験しにご家族でいらっしゃるお客様、他の地域で町づくりをしている方々が視察で訪れたりなど、たくさんの出会いに恵まれました。ご近所の皆さんからも温かいご理解と応援を頂き、お客様が道に迷っているときは案内をしてくださったり、散歩中のお客様に自家製の野菜をもたせてくださったり、本当に良い地域で宿をさせてもらっているなと感じます。

2020年はコロナ禍で、ゲストハウスの運営も大変だったんのではないでしょうか?

オープンしてから約一年とたたないころ、新型コロナウイルスが流行し、宿は数か月間休業を余儀なくされました。しかし、その間も地域の方たちが神山でのお仕事を紹介してくださったり、神山町在住の方がゲストハウスを利用してくださったりと、この苦しい時期を何とか乗り越えることが出来ました。

最近は徐々に県外からのご宿泊予約も増えてきました。神山へ移住を検討しているお客様も多く、相談を受けることもしばしばあります。実際に、moja houseに泊まったお客様が、何名か神山に移住してきました。神山を好きになってくれたり、そうやって人が訪れ、移り住んでくることでこの地域に活気が生まれることは、嬉しいことです。

私が神山に移り住んできてからもうすぐ6年目になります。私はmoja houseを運営する傍ら、「素人米」というチームで江田という菜の花と棚田が美しい集落でお米作りをしたり、地元の桜花連で様々な年齢やバッググラウンドを持つ人たちと一緒に阿波踊りを踊ったり、地域のつながりの中で、仕事とプライベートの境目なく、充実した日々を送っています。始めは知り合いもおらず不安なこともありましたが、周りの方々に恵まれ、のびのびと自分のやりたいことに打ち込める環境に身を置くことができて、この町に移住してきてよかったと思っています。