移住者インタビュー

Interview

Iターン50代佐那河内村

徳島唯一の村で送る、心身ともに健康的な生活

岩佐 洋介さん(写真左)

出身地:兵庫県神戸市

移住年:2016年1月

現住所:佐那河内村

取材年月:2016年9月

徳島唯一の村・佐那河内村で、古民家を改修して暮らしている岩佐洋介さん。移住する地を探して全国を訪れた岩佐さんが、なぜ徳島を、佐那河内村を選んだのか。お話を伺いました。

都会での生活に違和感を感じるようになって。

--そもそも移住を考えるようになったきっかけは?

岩佐さん:東京で会社員をしていた頃から「いつか田舎で暮らしたい」という意識がありました。都会での生活にだんだん違和感を感じるようになって。全てが他者によってコントロールされている不自由さ、というか。その思いが年々強くなってきて、移住する地域を探すようになりました。日本をあちこち回りましてね。その際の出会いの数々が移住への気持ちを後押ししてくれました。本当は、もっと早く移住するつもりだったんですが、東日本大震災があったでしょう。徳島に来る直前、岩手県釜石市で復興支援のため1年間を過ごしたので、予定より遅くなりました。

--全国をまわられたのち、徳島を、そして佐那河内を選んだのはなぜでしょうか。

岩佐さん:移住を考えるにあたって、まずは点数化していったんです。気温や降水量、自給率の高い自然環境、農産物や魚の種類の豊富さなどを調べて。徳島はその総合点数が高かったということです。生活のクオリティは落としたくないでしょう?それには地元産の農産物・水産物などが豊富であることが大切だと思いました。徳島市内のお寿司屋さんに行って「地のものを握ってください」とお願いしたら「お客さん、徳島の人ちがうね」と言われました。カウンターに並ぶ魚のほとんどが地元産。東京ではそんなことまずありませんからね。徳島に住んでる方は意識されていないでしょうけれど、それって本当に贅沢なことだと思うんですよ。

佐那河内村を知ったのは、お手伝いをさせていただいていた農家さんから、「佐那河内いいよ」と言われたのがきっかけでした。僕は少しへそまがりなんでね、佐那河内が「徳島唯一の村」であることや、それほど知名度が高くないこともポイントだったかなと思います。

--実際に家の修復が済んで移住されるまで、どれくらいの期間ががかりましたか。

岩佐さん:初めて佐那河内村を訪れてから、この家で住めるようになるまで1年ほどかかりました。それまではまるこハウス(佐那河内村にあるバックパッカーズホステル)で長期滞在していました。この物件とはわりと早くに出会ったんです。ただ、契約までに時間がかかりましたね。9月に紹介されて、実際に契約できたのは12月。まあ、見ず知らずの他人に家を貸すとなると、そう簡単には事が運ばないんですよね。持ち主だけじゃなく、その家に関わりのある人それぞれに思いがある。それは理解していましたが、こちらとしては、もしかしたら契約ができないかも、と考えると不安でしたね。ようやく契約が整って、2月から大工さんに入ってもらいながら、自分でできるところは出来る限り自分でやりました。入居できたのはゴールデンウイーク頃でした。まだ修繕は途中です。

 

--現在の暮らしはいかがですか。

岩佐さん:健康的な生活をしていますよ。日の出と共に起きて、日の入りと共に眠る、というような。なんというか、眠っていた感覚が目覚めてきている感じがします。それに、なんでも自分でやるのでたくましくなりました。ここはね、夏はクーラー無しでも涼しいんですよ。冬は、思っていたより寒かったですね。住むようになって、誤算だったことはそれくらいです。

ご近所との関係も、うまくいってると思います。この家はオープンな場にしているんですよ。DVDを借りてきて、近所の方と「蝮塚(はめづか)映画倶楽部」と名付けて上映会をしたり。寅さんとか、釣りバカ日誌とかね。みんなで利用できる空間にしたいんですよ。今後は、畑の開墾も進めていく予定です。それから裏庭にね、ピザ窯も作ろうと思ってるんですよ。水はけが悪いんで、それを直すのが先ですけれどね。そうそう、この裏庭にはね、猿が来るんですよ。「なんか見たことない奴が来たな」と偵察に来たんでしょうね(笑)。こちらのほうが新参者なので「よろしくお願いします」という感じです。猿も人も、自由に出入りする空間ですね。

これから移住する方へ

--移住してきた立場から、地域の方々に望むこと、また、行政に望むことは?

岩佐さん:近所の皆さんには本当によくしていただいてます。今以上に求めることはありません。皆さんが「サポートしたい」と思ってくださってるのが伝わってきますね。逆にこちらも、頼ってもらえたらと思ってるんですが、まだ遠慮があるみたいです。行政に対して望むのは、空き家を紹介する際、その地区のインフラについても合わせて情報提供していただけるといいと思います。家を修繕するとなったとき、費用の目安をつけるのに必要ですから。あとは、行政と地域の受け入れ体制にギャップがないことが大切ですね。地域をどうしていきたいか、という意思の統一。佐那河内村でそこがうまくいっているのは、移住コーディネーターの西川さん(写真右)や宮前笑会(佐那河内村活性化プロジェクト)の存在が大きいと思います。

--最後に、これから移住される方へのアドバイスをお願いします。

岩佐さん:マイクロステイ、移住体験をしておくことをおすすめします。やっぱり、観光で来るのと生活するのとでは違いますから。気温や日照時間なんかも体験しておくといいです。あちこち見て回るならキャンピングカーを利用するのもいいですよね。

地域の方々とうまく付き合うコツ、というのは特にないです。普通ですよ。きちんとあいさつすること。それと、隠し事をしないようにしています。そうじゃなくても、よそから来た人間ですから、何をやろうとしてるのか、信頼できる人間なのか、ご近所さんからしたら気になると思うんですよ。だから、なんでも包み隠さず話すようにしています。そうやってだんだん信頼関係ができていくんじゃないでしょうか。